喪中の葉書が届く。


身内の誰々が亡くなりましたので、新年のご挨拶を失礼させていただきます。と,あれである。


何かの加減で11月も半ばを過ぎて届いたりすると、既にこちらからの年賀状を投函した後だっりして、ちょっとこまった気分になる。


喪中の相手に年賀状を出してしまっても失礼にはあたらない。それを知ったのはつい最近の事だ。


葉書の一枚にこんな文面があった。


「義母が亡くなりましたので新年のご挨拶を失礼しますが、皆様からの年賀状は例年どうりお待ちしています」


でも


こんな時、年賀状の文面はどう書けばいいねだろう。


新年おめでとうとは書きにくい、出さないのも気が利かないようで・・・・・


つらつら思い悩んでいたら駅についてしまった。


大勢の老若男女がいっせいに帰宅の意志をもって歩き出した。


はたちの男性がはたちの女性に話しかけた。


「ひさしぶり。卒業以来。いま、なに(仕事)してるの?」



肩を並べて歩くふたりの姿がスキップしているように見える。


恋に落ちたように。





鬼・鬼族のことを知ったのは、南の島から大学進学のために大阪に来た時だった。


志望の学校に受かって、女子はまず美容院に行く。


ショートにしてください。


受験勉強でつめこんだものが知識から解放されたかった。髪を切ることによって。


私の髪を切ってくれた同じ歳くらいの男の子は、小さなはさみを器用に動かしながら、耳元でささやいた。


「あなた鬼族ですね」


「オ・二・ゾ・ク ?」


今突然思いあたったが、その美容師は広末サンと結婚したキャンドルじゅんさんにそっくりだった。


その人の息は私の耳の後ろから、なつかしい匂いを運んだ。


私ははじめて異性の匂いをかいで、覚えた。


オ二ゾクが鬼族であり、鬼のことだとわかったのは、このあとずっと時間がたってから、私が山あり、谷あり、よじ登ったり、転がり落ちたりしてから。



夕方、リンパマッサージにいった。


お店は山の近くにある自宅から少しふもとの方に降りたところにある。


エステシシヤンは美人揃いだ。きっとここのボスは顔で採用を決めているはず。


今日の担当さんは「今日はどこがお疲れですか」と聞いた。


「肩甲骨」


「ピンポイントですね」と言って笑った。


人の手に体をゆだねていると、角のあったところがムズムズして、やがてしびれたような眠りにひきずりこまれた。


やがて肩をぽんぽんとたたかれて、「終わりましたよ」と言って、「お疲れさまでした」と続けて言った。


「ありがとう。疲れたのはあなたでしょ」と言おうと思ったが、笑ってごまかした。