以前、講演に行ったある大学で学生さんに
「安田さんって人権方面の方ですよね?」
と聞かれました。
「人権方面」という微妙な言葉違いの向こう側には、
日本社会の寒々しい空気を感じざるを得ません。
人権を迫害される人たちの立場で調べ報道する人間が、
何か特別な「方面」に集まる、
あまり関わらないほうがいい偏った人たち、
とみなされているのです。
彼らに、ヘイトデモの様子や沖縄の辺野古基地建設現場の
座り込みなどの映像を見せると、
「怖い」と言うんです。
ヘイトでの激しい言葉遣いや国家権力の暴力が怖いのではなく、
人々が争う様子が見たくない。
その感覚からは当然、
人権侵害と闘うジャーナリストは、
特定の分野に集まる怖い人たちになる。
私は、差別に対して、中立風にふるまう国や政治家の態度が、
彼らに影響を与えていると思います。
「差別反対」を特定なことと遠ざける、
社会の空気を醸成しているのです。
それは結果として、
静かなる扇動と違わないという認識が必要です。
安田浩一