初めて見る国、期待と不安を胸に飛行機を降りる。
ドバイで購入したスカーフを頭から被ってみる。被らなければいけないわけではないが、郷に入ては郷に従えというではないか。スカーフ一枚で気持ちは少しアラブ女性に近づいたような気分だ。
視線が熱い。男の人が頭の先からつま先まで珍しいものをみるかのように、舐めまわして見てくるのだ。肌は出していないかと自分の格好を確認する。大丈夫見えていない。
はじめて降り立つトリポリ空港は、今まで私が見たことがないくらい、質素で簡素で戦前の日本もこんな感じだったのかもと思わせるような、非近代的な場所だった。
無機質なうす汚れた青い壁、チカチカするそっけない蛍光灯、ひどく簡素な青いボックスに座る男性、スタンプを押す音、タバコの煙と臭い。
古い、とにかく何か古い。タイムスリップしたような気分だ。
トリポリの空港に降り立って初めて、昨日までのビザのコピーや手際の悪さなど、すべてのことに納得がいった。
電子ビザなどそんなハイテクなものはないのだ。空港の風景を見てそのことが歴然とし唖然とした。凄い所に来てしまった。
飛行機を降りて、まず向うのが入国審査。指で示されたブースへ移動する。
出発する前に、ここで会社から派遣された人が入国手続きをしてくれるから大丈夫だと言われていた。それらしき男性が私達をみつけ、身ぶり手ぶりで側のベンチで待っているようにと言う。
しばらく場内を観察しつつ待つこと30分、未だお声がかからない。
何か問題でもあったのだろうかと男性の方に大丈夫かと合図をおくるが、大丈夫だとニッコリ笑顔で返してくる。
30分以上、入国手続きをするスタッフと話しこんでいる。交渉している感じだが、何を話しているのだろう。
後で聞いたのだが、この時どうやら、私の名前が彼らの入国リストにないと騒いでいたらしいのだ。じゃあ、私が持ってきたビザのコピーは意味をなさないということか。何の為のコピーなのだ。
代理のおじさんが、入国時に必要らしいお金(100LDY、日本円にして約7千円)を払いようやく許可が下りたようだった。
簡素な青いブースに座っている無愛想な男性の前を、ジーっと見つめられ、熱い視線に耐えながら通り過ぎた。
リビアに入国。
荷物の受け取りのため階下に降りる。キーキーと音をたてて回るベルトコンベアーの前まで行き、スーツケースを探すが、一向に出てこない。
人もまばらで荷物の数もすでに少ない。
付添いのお兄さんも一生懸命探してくれるが、みつからない。嫌な予感がする。
仕方なく荷物預かり部屋、といってもベルトコンベアーの脇に仕切りもなくただ簡素な机があるだけだったが、係の女性が座っている。
係の女性に荷物番号を伝える。用紙に記入するよう言われる。パソコンもなくすべてアナログ?!係の女性もどうしたらいいのかわからない様子。
言われたとおり、所定の用紙に名前と連絡先、荷物の引き取り番号、スーツケースの色や形などを記入した。
私達の荷物は出てくるのだろうか。。。
かなり不安。再度、郵便が運ばれているベルトコンベアーに連れて行かれるが、もちろんない。仕方がないので、見つかり次第連絡してくれるように再度お願いしてその場を離れた。