皮膚科ではアトピー治療の薬として、
ステロイドとタクロリムス(プロトピック)を主に使用します。
これらの薬はご存知のように強い効果もありますが、
長期で使用すると副作用が出たり、
薬の効きが悪くなり、アトピーが重症化する場合もあります。
このような重症アトピーの治療のために、
「シクロスポリン(商品名:ネオーラル)」
という内服薬の使用が2008年10月に承認されました。
シクロスポリンは真菌の代謝物からつくられる抗生物質由来の薬です。
Tリンパ球の働きを抑えることにより免疫反応を抑制します。
そのため元々は、臓器移植の拒絶反応を抑えたり、
ベーチェット病、膠原病などの自己免疫疾患の治療に使われていました。
アトピー性皮膚炎も、不必要な物質に免疫反応が起こるアレルギーが原因ですから、
過剰な免疫反応を抑えることで、症状が劇的に改善されるのです。
しかし、効果の強い薬ですから、強い副作用もあります。
主な副作用としては、腎機能障害、肝機能障害、胃腸障害、神経障害などです。
また、免疫機能が非常に低下するので、感染症も気をつけなくてはいけません。
これら強い副作用から、連続の使用は原則8週間、
最大12週間まで、連続投与する場合は、2週間以上間隔をあけて、
さらに血液検査をしながら投与量を調整する必要があるとされています。
使用が難しい薬ですので、皮膚科でやみくもに処方されることはないと思います。
しかし、今後強いステロイドも効かなくなった重症アトピーの治療には
処方されることもありますので、ステロイド、タクロリムス同様、
患者さんも副作用や薬の使用方法など正しい知識を持つことが大切だと思います。
●参考文献
五十嵐敦之ほか「アトピー性皮膚炎治療におけるシクロスポリンMEPCの使用指針」『臨皮』、63巻13号、1049-1054,2009年12月