このところの当ブログで、8月10日に「第13回・戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」で上映された『花物語』(1989 堀川弘通監督)を取りあげています。田宮虎彦さん原作の映画化で、実話に基づいているそうです。

戦争末期に出された「花栽培禁止令」に最後まで抵抗したハマ(高橋惠子さん)ですが、とうとう「禁止令」を守らないと「懲役」に処せられると通告されてしまいます。ハマが「花を育てることがそんなに悪いことなの! そんなに罪なことなの!」と慟哭するのが心に刺さりました。

上映後には、高橋惠子さん(僕の世代だと、関根恵子さんと言いたくなりますが)のトークショーがありました。実は、上映中、高橋惠子さんは僕の座っている席の近くでご覧になっており、涙を浮かべていたのでしょう、鼻をすする音が聞こえてきました。壇上に上がった高橋惠子さんは「封切以来、観ていなかったので……ハンカチを取りに(控え室に)戻りたかった」とおっしゃり、「私は戦争は体験していませんけれど、考える機会をもらえるというのは大切なこと」「いい作品に出させていただいた」と述べられました。

ひとつ前の当ブログで、佐々木すみ江さんの「花は”心の食べ物”やね」という台詞を紹介しましたが、高橋さんはロケ先の宿で、佐々木すみ江さんが台本をもらったときからこの台詞を何度も何度も練習しているのを聞いたそうです。その場面の撮影でも、監督からOKが出たのに、佐々木すみ江さんはご自身が納得していないのか、まだ一人でその台詞をやっているのを見て「やっぱり舞台のベテランの方は違うなあ」と思ったと回想されました。

高橋惠子さんはこの映画には特別な思い入れがあるそす。千葉県の和田浦という所で2か月ほど、ロケをしたそうで、夜になると本当に暗くなって「戦時中の役にすんなり入っていけた」とのことです。また千葉県のロケ先の家の方とはずっと交流が続いていて、今も「お花や卵」が送っていただいたりしているそうです。

また、このトークショーではサプライズの再会がありました。劇中、高橋惠子さんの長男役をされた方(当時、中学生か高校生)が客席にいらして、高橋さんに促され登壇。この八神徳幸さんという方は撮影最終日に高橋さんからメッセージ入りの色紙をもらったなどのエピソードを披露されました。35年ぶりの再会に高橋さんも嬉しそうで、八神さんが渡した花を愛おしそうに眺めておられました。

トークの最後に、高橋さんは「明日は撮影がありまして……」とおっしゃって、夫の高橋伴明監督の『桐島です』という作品であることを明かしました。「連続企業爆破」事件で指名手配されたまま病死した桐島聡さんを描いた作品だそうで、高橋さんは「私の中ですごい作品になる直観があるので、どんな役でもいいから出して!」と頼んだのだそうです。これは絶対、観たい作品です!

(ジャッピー!編集長)