ひとつ前の当ブログの続きで、最近リバイバル公開された『ソイレント・グリーン』(1973 リチャード・フライシャー監督)の話です。旧作なので「ネタバレ」を含みますからご注意ください。

映画製作時からは「近未来」の2022年、人口が激増する一方、食料不足、ごく一部の富裕層と路上にあふれかえる多くの人々という格差社会です。人々は政府から配給される「ソイレント」という栄養食品(板チョコみたいなタブレット形)に殺到します。

政府は「ホーム」という公共安楽死施設も設置しています。この辺、『PLAN75』(2022 早川千絵監督)と似ています。(『PLAN75』については、当ブログ2022年6月27日~30日にたっぷり書きましたので、ご参照ください)

そこに入るとベッドに寝かされ薬を飲まされます。目の前に360度のパノラマ・スクリーンがあり、音楽と共に大自然の美しい映像が映し出され、それを観ながら穏やかに?「死」を迎えるのです。

主人公のソーイ刑事(チャールトン・ヘストンさん)と部屋をシェアしていた老人(エドワード・G・ロビンソンさん、確か遺作だったと思います)は絶望から申しこんでしまいます。この施設に入る時に、「好きな色は?」「好きな音楽は?」などと質問されたロビンソンさん、「オレンジ色」「クラシック」と答え、その好みに合わせて「美しい夕焼け」が映し出され、ベートーヴェンの「田園」が流れる中、死に向かっていきます。これ、この映画の「2022年」を超えた今、VRでもっとすごいパノラマ映像ができるでしょう。本当に現実の方が進んでいるのです。

ソーイ刑事はロビンソンさんの死を止められませんでしたが、その「公共安楽死施設」で死んだ人の遺体がゴミ収集車のような大型車に投げ込まれるのを目撃します。ソーイがその車にこっそり隠れ、つけていくと、そこは「ソイレント」製造所。何と、「人間」を原料にして「ソイレント」という食品タブレットを作っていたのです!

そのうち、これも現実になるかもしれません。役に立たない人間はどんどん死なせて、「処理」して食べ物にする、いや、もっと進んで人間を「家畜」として育てたりするようになるかもしれません。だけど、よく考えてみれば、人口のほんの5%ぐらいに富が集中した今の世界、低賃金でこき使われる階層の人々は「食われて」いるようなものですね。(ジャッピー!編集長)