ひとつ前の当ブログで、久米宏さんが著書の『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』(朝日文庫)の中で書いていた「メディアの使命とは、時の権力を批判すること以外にないと信じている」という言葉を取り上げました。

久米宏さんはフリーになって、1985年10月に『ニュースステーション』を始めたとき、それまでと違うキャスター像を目指し「枠にとらわれずコメント」をしようと考えていました。しかし、「枠にとらわれない」といっても、「ニュース番組である限り、キャスターのコメントには一つの方向性が必要だ。どこに軸を置くか。ひと言で言えば、それは“反権力”だ」と書いています。

ですから、久米宏さんは番組に政治家をゲストに呼んだときには、その人を怒らせたら成功だと思ったといいます。それまで「報道番組」をやっていなかったのを逆手にとって、「すみません、僕は政治の素人なもので……」と切り出し、国民の目線でストレートに踏み込むことができたと回想されています。自分の質問で政治家が苦々しい表情を見せると、嬉しくなったそうです。

それが今はどうでしょう。何だか、当たり障りのない質問ばかりで、何だか政治家が「聞いてほしい」シナリオに沿っているだけ。観て「時間のムダ」だったと思うことがずいぶん多くなったような気がします。

当ブログでも以前に書きましたが、2021年1月に『報道ステーション』に当時の首相「スガーリン」ことガースーが出たときなんか、キャスターの冨川悠太がペコペコして、よいしょばかりしていて本当に「吐き気」をもよおしました。

久米宏さんは上にあげた著書の中で、「インタビューに答える政治家がニコニコ笑っていたら、その番組は信じるに値しない」とハッキリと書いています。それなのに、『ニュースステーション』の後を継いだ『報道ステーション』のキャスターが権力者に媚びへつらっていたのです。

以後、久米さん流にとらえると、信じるに値する報道番組って無いような気がします。官邸からの圧力が相当かかっているのでしょうか。久米さんはこうも書いています。「マスメディアが体制と同じ位置に立てば、その国が亡びの道を歩むことは歴史が証明している」 (ジャッピー!編集長)