ふたつ前の当ブログで書いたように、『赤い鳥逃げた?』(1973 藤田敏八監督)で脚本をめぐって藤田敏八監督と衝突した脚本家のジェームス三木さんは、自身も監督に進出します。

その『善人の条件』(1989 ジェームス三木監督)は選挙の裏側を題材にしたブラックな風刺劇です。もちろん、自身で脚本も書いています。ある市の市長が「腹上死」するところから映画は始まります。突然の「市長選」となり、市長の妻(山岡久乃さん)は娘(小川真由美さん)の夫(津川雅彦さん)を立てます。

津川さんはほとんどデスクで本ばっかり読んでいるカタブツの学者で政治も素人ですが、市議会に腐敗がはびこっていることを知らされ立候補を決めます。クリーンな選挙を目指していた津川さんですが、周囲に群がってくる支援者や選挙ブローカーに翻弄され、結局、カネまみれになっていくというストーリーです。

特に、選挙対策のプロと称する男を丹波哲郎さんが例の調子で怪演します。この男、理念や政治信条なんてなく、「選挙で戦い、相手方が降参するときの達成感」を生きがいにしていると語り、選挙を一種のスポーツのように捉えています。

丹波さんは「選挙は遊びじゃないんだ。戦争ですよ」と言い切り、さっそく、5000万円のカネをバラまきます。この丹波参謀の言いなりになっていき、津川さんも毒されていきます。「クリーン」な選挙に賛同し、大学の教え子(山下規介さん=ジェームス三木さんの息子ですね)が応援にやって来ますが、その目の前で「カネをもっと、あの地域に投下しろ!」なんて叫んでる恩師の姿を見て幻滅します。

この「バラまき」資金の原資になっているのが、地元の建設会社のカネです。リゾート開発がからんでいて、津川さんに恩を売るために出資しているのです。選挙のライバル候補(何と、「指圧」で有名な浪越徳治郎さんです)も金権が当然とばかり、カネをバラまくので、どんどんエスカレートしていきます。とうとう、建設会社の柳生さんが「もう無理です……会社にも予算というものがあるんです。私のクビを飛ばす気ですか」と泣きを入れるのが笑えました。きっと、こういうやり取りが実際に交わされているんだろうなあ。(この項、続く) (ジャッピー!編集長)