ひとつ前の当ブログで、2023年度後期の朝ドラ『ブギウギ』の終盤に内藤剛志さんが出演されたことを取り上げました。内藤剛志さんがテレビ朝日でやっていた『警視庁・捜査一課長』の刑事そのものという感じの刑事でした。

内藤剛志さんが演じる「高橋」刑事が登場したのは、福来スズ子(趣里さん)の娘・愛子が誘拐されるという事件が起こったからです。これは、スズ子のモデルである歌手・笠置シヅ子さんに実際に起こったことを元にしています。1954年3月31日に笠置シヅ子さんの家に「天神橋の下に6万円を置け。さもないと一人娘を殺すぞ」という脅迫状が届いたのを皮切りに、電話も含めて何度も脅迫を受けました。笠置さんのマネージャーが犯人の指定場所に金を持っていき(『ブギウギ』ではこのマネージャ―を三浦獠太さん=カズの息子が演じていました)、張りこんでいた刑事たちに逮捕されました。笠置さんの娘は誘拐されることもなく無事だったのですが、驚くべきことにこの犯人は翌年1955年9月にも同じように笠置さんを脅迫して再び逮捕されているのです。

朝ドラ『ブギウギ』では、犯人(水澤紳吾さん)が愛子の友だちの父親と分かり、同情したスズ子が「使用人」として雇うという展開になっていました。これもちょっとビックリですが、僕はこれには「トニー谷さんの息子誘拐事件」も入っているような気がします。

「ソロバン」を鳴らし、独特の英語混じりの口上で有名なトニー谷さんも1955年、長男を誘拐され身代金200万円を要求されました。学校帰りのところを誘拐され、トニー谷さんはテレビで号泣して「息子を返してくれ」と訴えました。警察の必死の捜査で犯人も捕まり、息子さんも無事でした。犯人は「トニー谷の人を小馬鹿にしたような芸風が嫌いだった」と供述したと言われています。しかし、トニー谷さんは「息子に怪我もさせず丁重に扱ってくれた」と、犯人が捕まって苦境になったその家族にお金や衣類を送っていたのです。このことは当時は知られず、ずっと後になって明らかになったのですが、スズ子の「誘拐犯人を雇う」という展開のアイデアになっているんじゃないかなあ。

その後は、1974年に津川雅彦さんと朝丘雪路さんの娘が誘拐される事件がありました。このときは「身代金」を銀行口座に振り込めと要求され、CD機で引き出した情報から犯人が捕まりました。いずれにしても、子どもを誘拐するとは本当に卑劣な犯罪です。(ジャッピー!編集長)