ひとつ前の当ブログで書いたように、2019年の5日(月)から28日(木)の4日間にわたって『ひよっこ2』が放送されました。

その『ひよっこ2』の最終回(3月28日)に、伊藤沙莉さん(現在は『虎に翼』の主役ですね)演じる米子(自称・さおり)がバスの中で♪死んでもあなたと~暮らしていたいと~と、由紀さおりさんの「手紙」を歌います。これは1970年の歌ですが、第1回(3月25日)に登場した「いいじゃないの幸せならば」と「真夜中のギター」は1969年の曲です。佐良直美さんの「いいじゃないの幸せならば」は1969年度のレコード大賞受賞曲ですが、「真夜中のギター」を歌った千賀かほるさんも同年レコード大賞で新人賞を獲得しましたから、翌1970年も唄われていたでしょう。今よりも、ひとつの楽曲の寿命は長かった時代でした。

その1969年というのは僕にとっては、人生の中でいちばん記憶に残っている年です。当ブログでは以前にも書きましたが、僕の父親が3月末に亡くなり、兄が4月半ばに亡くなり、4人家族が1と月の間に母親と自分の2人家族になってしまったのです。いきなり家族に降りかかった「死」。子どもながら、この世はこういう理不尽なことが起こるんだということを知った年でした。

そんな、もしかしたら自分がいちばん感性が強かった年に聴いた曲は本当に脳裡に強くこびりついていて、そのメロディを聴いただけで「あの頃の僕」の記憶が蘇ってくるのです。それは、トワ・エ・モアの「或る日突然」であり、アン真理子さんの「悲しみは駆け足でやってくる」であり、千賀かほるさんの「真夜中のギター」なのです。

他にも、高田恭子さんの「みんな夢の中」とか中山千夏さん「あなたの心に」、新谷のり子さんの「フランシーヌの場合」なども僕の記憶スイッチを押す曲です。ベッツイ&クリス「白い色は恋人の色」や、ビリー・バンバン「白いブランコ」、加藤登紀子さん「ひとり寝の子守唄」なども自分の寂しい時期に聴いた曲でした。沼津の親戚の家に預けられたときにバスの中でかかっていたのが、ズー・ニー・ヴーの「白いサンゴ礁」だったなあ……と人生の場面ごとに記憶が歌とセットになっているのです。

二人家族になり、母は必死に働いて僕を育ててくれて昭和を生きていったのです。ああ、あれから55年、よく生き抜いてこれたと思うと同時に、自分の人生は誰かのためになっていたのか……と考えると深い悔恨と空しさにとらわれるのです。

『ひよっこ2』で1969年の曲を聴いて個人的な感傷に浸ってしまったのでした。 (ジャッピー!編集長)