続けて、当ブログ2022年1月25日に書いた「1968年の『ひよっこ』を描いた特別編が2017年の『紅白歌合戦』で」を以下に再録します。

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このところの当ブログで、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016 ケン・ローチ監督)に触れています。

この映画のタイトルは、劇中、血の通わない官僚的な対応をする役所の壁に、主人公が「わたしは、ダニエル・ブレイクだ」と大きくスプレーで大書することからとられています。自分には名前がある、自分という人間がここにいる、という思いが観る者の胸を刺します。これは2017年前期の朝ドラ『ひよっこ』にも同じような思いをこめたシーンがあったことを当ブログ2021年8月24日「『ひよっこ』の印象的なシーンと『わたしは、ダニエル・ブレイク』」に書きましたので、ご参照ください。

『ひよっこ』は2017年大晦日の「紅白歌合戦」の中で、特別編が放映されました。紅組司会の有村架純さんが演じる「みね子」たちが「すずふり亭」で1968年の忘年会で集まるという設定でした。一気に「ひよっこ」のいろんな場面が蘇りましたが、考えてみれば、ここはみね子のお父さん(沢村一樹さん)が東京に出稼ぎに来て偶然食べに入ったお店でした。そして、これから故郷に帰るという沢村さんにお店の宮本信子さん、佐々木蔵之介さんが「汽車の中で食べて」と「カツサンド」(だったかな?)を持たせてくれます。

もちろんこれは「ドラマ」なんですが、かつてはこのような人と人の繋がりは多かったように思います。「紅白」の審査員でいらした宮本信子さんも『ひよっこ』主題歌を歌った桑田佳祐さんのパフォーマンスのあと、『ひよっこ』について「こういう人情がありましたね、昔は」とおっしゃっていました。相手が置かれている状況に至る思い、一所懸命に生きている人への共感、それが人を繋ぎ、また同じように誰かに共感し、バトンを渡すように未来を紡いでいくのだと思います。『ひよっこ』が心に響くドラマになったのは、そんな願いが丁寧に描かれていたからでしょう。『ひよっこ』特別編で、身近な仲間に再会したような懐かしい思いでした。

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次のブログに続きます。(ジャッピー!編集長)