このところの当ブログでは、2017年前期朝ドラ『ひよっこ』関連で過去に書いたものを再録しています。以下は、当ブログ2021年8月22日に書いた「『ひよっこ』、シシド・カフカさんと“フラワー・ムーブメント”」です。

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ひとつ前の当ブログで、2017年前期朝ドラ『ひよっこ』で、ビートルズ来日公演のときの騒動が出てきたことに触れました。

このとき、みね子(有村架純さん)と同じアパートに住んでいる早苗(シシド・カフカさん)がビートルズのメンバーの中で「私はリンゴが好き」とポツンと言う場面がありました。この早苗というのは、何回もお見合いを断ってきたり、「永遠の25歳」と語っていたり、シシド・カフカさんのミステリアスな雰囲気とも相まって「謎の女性」キャラだったのです。

ドラマも最終盤になって、早苗の運命の人が現れ、感動の再会を果たします。上京したばかりのとき、停まってしまったエレベーターで乗り合わせた男性です。早苗と恋に落ちたこの男性はドラマーで、アメリカに音楽修行に行くという設定で、かつて早苗は「25歳まで待つ」と約束していたのです。これで、早苗さんが何回もお見合いを断ったり、「永遠の25歳」と称していた「謎」が解明されたわけです。なるほど、好きな人がドラマーだから、リンゴ・スターさんが好きと言っていたわけかと。

「リンゴが好き」というセリフを聞いたときは、シシド・カフカさん自身がドラマーなので「楽屋落ち」的な台詞かなと思ったけど、ちゃんとストーリー的に回収されるようにできていたのですね。

そして、この男性(演じるのは、コレクターズの古市コータローさん。ご本人はドラマーじゃなくギタリストです)は、早苗を抱きしめ「花のサンフランシスコに行かないか」と言います。最後まで「時代」に拘った『ひよっこ』らしいエピソードです。当時のサンフランシスコには、ヴェトナム戦争にアンチを唱えた若者などが集まりました。彼らは自由で緩やかな連帯を求め、コミューンを作り、カウンター・カルチャーの発信地として、ヒッピー文化やサイケデリック・ロックなどが生まれました。

アル・クーパーさんは、「サンフランシスコは当時、アメリカでもっとも自由な街だったね。街を行き交う人たちからもそれが感じられた」と語っていますが、そんな雰囲気を表しているのが1967年7月、まさに「サマー・オブ・ラブ」の真最中にヒットしたスコット・マッケンジーさん歌う「花のサンフランシスコ」です。  「ママス&パパス」のジョン・フィリップスさんが作ったこの曲、♪If you're going to San Francisco, be sure to wear flowers in your hair~と歌われ、僕も大好きな曲です。アメリカに渡った早苗からみね子に送られた写真にも、早苗さんの髪に「花」がさしてありました!

一方、茨城のみね子の実家では生産を始めた「花」がキレイに咲きます。ムネオ叔父さんは「フラワー革命だ!」と大喜び。これで、みね子に仕送りの苦労をさせなくていいと思いがつながり、「農家」、「みね子の自立」と二つの「殻をやぶる」ことになります。この終幕に、サンフランシスコの「フラワー・ムーブメント」をリンクさせた脚本の作り、まことに見事だというしかありません。

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さらに次のブログに続きます。  (ジャッピー!編集長)