このところの当ブログで、愛人を殺害した克美しげるの事件を速攻で映画化した『戦後猟奇犯罪史』(1976 牧口雄二監督)を取り上げました。現在、裁判が始まったばかりの「水原一平」事件が早くもテレビドラマ化されるというので思い出したのです。

この「水原一平」の事件をドラマ化するとなると、当然、大谷翔平選手の存在抜きには描けないわけですが、こういう場合、大谷選手に許可を受ける必要があるんですかね。被害者なわけですが、「野球」以外のプライベートに関わる部分も出てくるだろうから、やっぱり許可をもらい、いくばくかのお金を払うんですかね。

こういう実話を基にした物語を作るときに、よく「名前」をちょっと変えるなんて手を使いますよね。誰が見ても「あの人のことだ」と分かるのに、「フィクション」だという言い訳になるということなんでしょう。吉永小百合さんが田中絹代さんを演じた『映画女優』(1987 市川崑監督)でも、「溝口健二」→「溝内健二」、「清水宏」→「清光宏」、「五所平之助」→「五生平之助」とムリヤリな改名?が行われていました。そうすると、水原一平ドラマも「大谷翔平」は「小谷翔太」とかそんな感じになるんですかね。

こういうのは昔からあって、人形浄瑠璃や歌舞伎でお馴染みの『仮名手本忠臣蔵』では「大石内蔵助」→「大星由良助」と変えています。ちなみに「仮名手本」とは「四十七士」を「仮名四十七文字」にもじったものです。そもそも、歌舞伎とかは庶民にも知られる事件を題材にしたものが多く、テレビも映画も無い時代に「ニュース」の役割も果たしていたわけです。「心中もの」なども、実際にあった事件を基に作られた話が多いのです。「三面記事」的に興味をひいたのでしょうね。

そういえば、「市川猿之助」の事件なんかも昔だったら、恰好の歌舞伎題材ですよね。いろいろな事情はあるとはいえ、結果的に「親殺し」ですから、相当にスキャンダラスであると同時に物語をふくらませる余白もたっぷりあります。

今は、新作歌舞伎もアニメに材をとったりで、実際の犯罪をモチーフにする演目はないようですが、何年後には「市川猿之助」事件を題材にした歌舞伎が登場するかも。「芸事」というのは多分に「残酷」なところがあるからねえ。猿之助自身、「裏方で復帰したい」みたいなことを言っていたから、案外、自分でプロデュースするかもしれません。(ジャッピー!編集長)