ひとつ前の当ブログで、『戦後猟奇犯罪史』(1976 牧口雄二監督)を取り上げました。

実際に起こった犯罪事件を再現したオムニバス映画で、泉ピン子さんがレポーターで進行しますから、当時人気だった日本テレビ『ウィークエンダー』の再現ドラマを意識した作りです。

3つの話が出てきますが、第2話が「克美しげる」事件。撮影中に事件が起こり、「これもぶちこんだれ!」と岡田茂さんの鶴の一言で速攻で作られたので、当初は予定されていなかったのです。(他の2つの話は、お馴染みの「西口彰事件」と「大久保清」事件)

カヴァー・ポップスの時代からヒット曲を出し、「エイトマン」の主題歌でも知られる克美しげるですが、人気も落ち目になった1970年代、奥さんがいることを隠して交際したホステスさんにお金を貢がせ、しまいにはこの女性をソープランドで働かせて金をむしり取っていたのです。

たしか、当時のお金で何千万円も貢がせていたと思います。そして、新曲を出しカムバックが見えてくると、この愛人が邪魔になり殺害、車のトランクに死体を詰めたまま羽田空港の駐車場に置き、自分は北海道にキャンペーンに行っていたのです。さんざん貢がせて、成功の邪魔になるからと殺害、あまりの行状です。殺された女性、どんな思いだったでしょう。

車のトランクに殺害死体を入れたまま、何くわぬ顔で歌を唄って拍手をもらっていたなんて、映画や刑事ドラマなんかでよく見る場面ですが、実際にやっていたのは衝撃的で、当時の週刊誌を賑わせました。

このように、芸能人が下積みや売れない時代に苦労を共にした女性を、売れたら邪慳に扱うというのは昔からよく聞きますし、いかにも「昭和的」と思ってしまいがちですが、こういう女性を踏みにじる案件はいまだにあるのでしょう。

2019年1月には、「スーパー銭湯のアイドル」、ムード歌謡グループの「純烈」のメンバーの1人が、過去に同棲していた女性の貯金3000万円を使いこんだり、DVもあったことが発覚しました。DVのせいで流産してしまったといいます。さらに、他の女性とも浮気していたという話も出ていました。男女のことは当事者にしか分かりませんが、「ブレイク」する前の売れない時代を支えてくれていた人にひどい仕打ちです。

殺人や芸能人スキャンダルで明らかになってないだけで、同じようなことで苦しんできた女性は多いと思います。それこそ朝ドラ『虎に翼』で描かれているような、「男性優位」の価値観が根強い土壌がこういう風潮を作ってしまっているのでしょう。そして、この国はいまだに「ジェンダー・ギャップ」が世界的にも下位に沈んでいるわけです。

「純烈」は2018年、念願の「紅白歌合戦」に出場したあとのスキャンダル発覚で、このメンバーが脱退、4人組として再出発となったのでした。(ジャッピー!編集長)