大谷翔平選手の口座から多額の金を引き出していた元・通訳の水原一平が、ロサンゼルスの裁判所に出廷しました。

多くの報道陣でごった返した様子がニュースで映し出されていました。これだけ、関心を集めている事件、さっそくテレビドラマ化されるという話も出ているようです。当ブログ4月17日にも書きましたが、僕だったら『太陽がいっぱい』(1960 ルネ・クレマン監督)のような作品にしますね。華やかなスター・大谷選手の一番身近にいて「羨望」「嫉妬」があったのではないかと思うからです。

ともかく、事件の鮮度が落ちないうちに「ドラマ化」しようという「商魂たくましい」ということですね。かつて、日本映画にもそんな例がありました。「克美しげる事件」をすぐに映画化した『戦後猟奇犯罪史』(1976 牧口雄二監督)です。

芸能人が下積みや売れない時代に苦労を共にした女性を、売れたら邪慳に扱うというのは昔からよく聞く話ですが、いちばん酷いのがこの事件でしょう。殺してしまっているわけですから。克美しげるは、ジョン・レイトンさんの「霧の中のジョニー」の日本語カヴァー(訳詞は漣健児さん)でヒットを飛ばしましたから、「カヴァーポップス」の時代が生んだ歌手です。でも、僕たちの世代からいえば、何といっても『エイトマン』の主題歌です! ♪光る海、光る大空、光る大地~ゆこう 無限の地平線~走れエイトマン~弾よりも早く~ と唄える人は多いと思います。(作詞・前田武彦さん、作曲・萩原哲晶さん)

『戦後猟奇犯罪史』は、当時「ウィークエンダー」で大人気の泉ピン子さんをレポーターに犯罪を再現するオムニバス映画です。第1話がのちに『復讐するは我にあり』(1979 今村昌平監督)でも描かれる「西口彰事件」で室田日出男さんがえんじました。第3話は「大久保清事件」で川谷拓三さんがベレー帽をかぶって熱演しました。その2本に挟まれた第2話が「克美しげる事件」でした。劇中での「風見のぼる」を演じたのは五十嵐義弘さん。

実は、この映画を撮影中にこの「克美しげる事件」が起こり、岡田茂社長が「よし、これもぶちこんだれ!」と急遽、シナリオが作られ速攻で撮られたのです。さすがは不良性感度を標榜する東映の大プロデューサーです。お客さんが観たいものにはすぐ動きます。克美さんはかつて人気があった頃に『不良番長』シリーズ(1968~1972 野田幸男監督ほか)に何本か、梅宮辰夫さんの仲間役で出ていました。栄光を感じたであろう、その同じ東映で今度は「殺人犯」としての惨めな姿が容赦なく映画化されたのでした。 (ジャッピー!編集長)