ひとつ前の当ブログで、昨日5月2日に命日を迎えた忌野清志郎さんのことを書きました。

RCサクセション『カバ―ズ』には、「反原発」をテーマにした曲が入っていた他、反戦、環境問題を取り上げた曲も入っています。今もし、清志郎さんがこの「悪臭ただよう」社会に生きておられたら、曲にどんなメッセージをこめたでしょう。

日本全体がどうも「怒り」を忘れているんじゃないかと何度も書いていますが、歌の世界もこういった社会へのプロテスト・ソングというものが無くなりましたねえ。ということで、当ブログ2021年4月30日に書いた「テイラー・スウィフトさんと、“声”をあげるということ」を以下に再録します。

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ひとつ前の当ブログで、『1987、ある闘いの真実』(2017  チャン・ジュナン監督)を取り上げました。僕がこの映画を観たのは2018年9月、「シネマート新宿」でした。

ちょうどその頃、アメリカでは人気歌手のテイラー・スウィフトさんが11月の中間選挙で民主党候補に投票すると表明し、ファンにも投票に行くように呼びかけました。テイラーさんは今まで政治的発言はしていなかったので、ノンポリかと思われていましたが、トランプ政権に対して黙っていれなくなったのでしょう。特に、テイラーさんは「カントリー」という音楽ジャンルから人気が出た方で、「カントリー」を愛聴する人はいわゆる「保守的な白人層」(トランプ支持者と重なる)が多いので、ファンを失うリスクは高いのですから、思い切った行動です。

すると、即、今度は人気ラッパーのカニエ・ウエストさんがホワイトハウスを訪問、トランプ大統領への支持を猛アピールしました。日本でこういうことをしたら、バッシングを受けるでしょうね。「音楽活動に政治を持ちこむな」とか炎上間違いなしでしょう。スポンサーの圧力やテレビに出れなくなったりすることを怖れて、事務所もミュージシャンの発言を規制するでしょう。「忖度」は官僚だけの話ではないのです。

でも、ミュージシャンだって国民のひとりです。「主権者である国民」として意見を持つことは当然なのに、何だか敏感すぎる世の中になったような気がします。昭和の頃に比べても、コンプライアンスとかいろいろな縛りが確実に強くなって「無色、中立で政治には無関心」が、ミュージシャンのあるべき姿になっている感じがします。何だか、気持ち悪い。「声」をあげないという「賛同」が、社会をどのようなものにしていくかを考えると本当に怖ろしいです。

そういえば、沢田研二さんのコンサートが直前に中止となったのもこの頃でしたっけ。理由が謎でした。最近は「憲法9条」や「反原発」といったメッセージ色の強い曲を歌っているジュリー、知人からは「テレビに出れなくなるよ」と忠告されても「自分の思っていることを伝える」とコンサート活動に専念しています。(←当ブログ2021年1月5日「沢田研二さんの不滅のロック魂」をご参照ください) もしかして、そんな関係でどこかから圧力がかかって「コンサート中止」になったのではないか……権力がそういう「前例」を作って、さらに「忖度」や「同調圧力」の空気を広めているんじゃないかと疑ってしまいます。 

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先頃、テイラー・スウィフトさんは来日公演を行い、熱狂的に迎えられましたが、日本にも彼女のように堂々と「主張」するミュージシャンが出てきてほしいものです。 (ジャッピー!編集長)