ひとつ前の当ブログで、『極道VS不良番長』(1974 山下耕作監督)を取り上げました。

『極道』シリーズ(1968~1972 山下耕作監督など)と『不良番長』シリーズ(1968~1972 野田幸男監督ほか)という、東映の2つのシリーズを合体させた映画です。

これより前、『不良番長』の神坂弘(梅宮辰夫さん)は池玲子さん主演の『女番長ブルース 牝蜂の挑戦』(1972 鈴木則文監督)にもスケ番グループの助っ人として登場します。『女番長』ミーツ『不良番長』というわけです。

長いシリーズの作品だと、マンネリになる一方、キャラクターは観客のお馴染みになっているので他の作品にもすんなり受け入れやすいわけです。そういう意味で、『不良番長』シリーズとコラボしてほしいシリーズがありました。『網走番外地』シリーズです。

『網走番外地』(1965 石井輝男監督)から石井監督で10本作られ(健さんの役名は橘真一)、さらに役名を末広勝治と変えて『新・網走番外地』シリーズとなって8本作られました。話はだいたい同じようなパターンですが、だから面白いというのもあります。

新シリーズの2作目『新・網走番外地 流人岬の血斗』(1969 降旗康男監督)では、映画が始まるとお馴染みのメンバーが座って観客の方を向いています。そして、由利徹さんが「これからは、この高倉に代わりましてアタクシ、由利徹が主役を……」と口上を述べます。砂塚秀夫さん、六本木吉野さんなどの常連メンバーがズッこけ大騒ぎになる冒頭に大笑いしたのを覚えています。

いわば、映画版の「客いじり」ですが、こういった悪ノリは、この『流人岬の血斗』にも出ていた山城新伍さんがよく『不良番長』シリーズでも(アドリブ混じり?で)かましていました。その極致は『不良番長 一網打尽』(1972 野田幸男監督)です。『流人岬の血斗』よりも後の作品ですが、こちらもいつものパターン(全16作の15作目です)で映画が終わったあと、「終」の文字の真ん中をこじ開けて、番長(梅宮辰夫さん)と共に現れた五郎(山城さん)が客に向かって「おっ、そこカップルやな。よろしおまんな」とか「お前は学割やな」とか言います。もう爆笑です。

このところの当ブログで書いたように、東映は長寿シリーズを逆手にとって、『極道VS不良番長』(1974 山下耕作監督)、『極道VSまむし』(1974 中島貞夫監督)といったシリーズがクロスした映画を作っています。そのノリで『網走番外地』と『不良番長』を合体させた作品なんか観てみたかったです。健さんと山城さんの「客いじり」なんて面白そうじゃないですか!  

このように他のシリーズのキャラクターが別の映画に出てくるというのは、各映画会社が自社の撮影所で製作していたからこそ出来たわけです。そういう意味では、東映は、アイアンマンやハルク、マイティ・ソーとかマーベル・コミックスのヒーローが一堂に会する『アベンジャーズ』(2012 ジョス・ウェドン監督)の先取りをしていたのです。 (ジャッピー!編集長)