ひとつ前の当ブログで、『鉄砲玉の美学』(1973 中島貞夫監督)を取り上げました。

『鉄砲玉の美学』の基になったのが『現代やくざ・血桜三兄弟』(1971 中島貞夫監督)で、『現代やくざ』という菅原文太さん主演シリーズの一本でありながら、脇の渡瀬恒彦さん、荒木一郎さんが事実上の主役というか、彼らの方に中島監督の思い入れが強いのが感じられることも2つ前の当ブログで書きました。

同じようなことを感じたのが、『まむしと青大将』(1975 中島貞夫監督)です。『まむしの兄弟』シリーズ(1971~1975 中島貞夫監督ほか)は菅原文太さんと川地民夫さんのコンビが大暴れするコメディ・アクションですが、最終作となった『まむしと青大将』は菅原文太さんはともかく、相棒の川地民夫さんは出番も少なく、後景に引っ込んでいる感じです。代わりに存在感を見せるのが「青大将」こと荒木一郎さん演じる健というイカサマ雀士なのです。

菅原文太さん演じる政が久々に出所、ポン引きの川谷拓三さんに誘われ賭け麻雀に誘われます。そこで荒木一郎さんのイカサマに引っかかります。その金は取り戻しますが、以後も荒木一郎さんと組んだ麻雀好きの女・緑魔子さんに惚れてしまったりで、菅原文太さんは翻弄されて物語は進みます。

イカサマ師の役の荒木一郎さんは劇中で当然イカサマの技を行うのですが、全部「吹替え」なしで撮影したそうです。一応、プロの雀士の人が監修についていたそうですが、「アドバイスだけもらって」自分でやったといいます。普通に「イカサマ」をやると地味なので、映画的に「絵」になるよう考えてパイのすり替えなどをやって見せたのです。

そういえば、荒木一郎さんはそれより前『白い指の戯れ』(1972 村川透監督)でスリ役をやったときも、スリのテクニックをすぐに習得?して、「カットを割ろう」という監督を制して「本当にやって見せるから」と見事にワンカット撮影したそうです。手先が器用なんでしょうね。荒木一郎さんはマジシャンとしての腕も一流といいます。

映画は相棒の勝(川地民夫さん)を助けようと菅原文太さんが金を強奪したり、二転三転の争奪戦が展開、1億円が路上に散らばるというラストはフランス映画ぽかったですね。お人好しで相棒のために体をはる文太さんを見て、荒木一郎さんが「まむし……どうかしてるぜ」と呟くシーンがあるのですが、この「まむし……」という荒木一郎さん独特の口調?をよくマネしたものです。(ジャッピー!編集長)