ひとつ前の当ブログで、「南国土佐を後にして」は元々、戦争中に中国戦線で従軍していた土佐出身の兵隊さんたちが作り、唄われていたもので、♪南国土佐を後にして~戦地へ来てから幾年ぞ~ という歌詞だったことを書きました。

その歌詞を一部変えて大ヒットになったわけですが、歌ったのはペギー葉山さん。ペギーさんは2017年4月12日にお亡くなりになりました。ジャズから、歌謡曲、唱歌まで幅広く数々の歌で楽しませてくれ、誰でも知っている「ドレミの歌」の歌詞、♪ドはドーナツのド~ でも知られています。

『南国土佐を後にして』(1959 斎藤武市監督)にもゲスト出演されていますが、それよりも前にペギーさんが出演された映画を8年前ぐらいに観ました。「神保町シアター」で「芦川いづみアンコール&リクエスト」という特集をやっており、僕のアモーレ、芦川さんの未見の作品をやっていたので観に行ったのです。『お転婆三人姉妹 踊る太陽』(1957 井上梅次監督)です。

井上監督らしいミュージカル風のコメディで、轟夕起子さんが、三人の娘と暮らしています。その三姉妹を演じるのが、ペギー葉山さん、芦川いづみさん、浅丘ルリ子さんで、お母さんが「冬子」、長女のペギーさんが「春子」、次女の芦川さんが「夏子」、末っ子の浅丘さんが「秋子」と四季の名前がついています。亡くなったお父さんは有名なミュージカルの作曲家だったので、裕福そうで、いつも音楽にあふれた暮らしです。でも、「お母さんが寂しいだろうから、新しいお父さんを探してあげましょうよ」と三人は考え、その候補を見つけようという話になります。

そして、三人が目をつけたのが、秋子の高校に新しく赴任してきた先生で、さっそく秋子が仮病をつかって先生が家庭訪問するように仕組みます。お母さんを美容院にやったり、三人の気持ちはほとんどお見合いです。この先生を演じているのが、何と!安部徹さんなのです。そういえば、他の映画でも二枚目の役を観た記憶がありますから、昔は違和感なかったのでしょうが、さんざん後年の悪役を見続けた現在から観ると、何だか妙な気持ちです。ちなみに、井上梅次監督は新東宝、日活、東宝、大映、松竹、大映と各社で撮った職人監督ですが、ほとんどの作品にもれなく安部徹さんが出ております。

映画は、三姉妹のお父さんを偲ぶショーが開催され、春子がヒロインに抜擢されます。ペギーさんが美しい歌声を披露するステージをお母さんと安部徹先生が仲良く観ているというハッピーエンドです。SKD出身の芦川さんも劇中、歌と踊りを披露しますし、ちょっとこまっしゃくれた末っ子役の浅丘さんはメガネっ子(今だったら「萌え」の対象ですかね)で登場します。他にも、顔を見せる程度ですが、石原裕次郎さんや岡田真澄さん、南田洋子さん、フランキー堺さん、葉山良二さんなど当時の日活スターが大挙して出ています。(井上監督夫人の月丘夢路さんも出ています) 封切が1957年1月1日という作品なので、顔見世興行的なものだったのでしょう。こんな風に豪華な顔ぶれなのに、安部徹さんの二枚目役がいちばん印象に残ってしまいました……。  (ジャッピー!編集長)