ひとつ前の当ブログで、『野良猫ロック』シリーズの第4作『野良猫ロック・マシンアニマル』(1970 長谷部安春監督)を取り上げました。長谷部安春監督が鈴木清順監督の助監督だった経験が活かしたケレン味は少な目ですが僕は好きな作品です。

『野良猫ロック』シリーズ全5本のうち、長谷部安春さんが監督したのは3本。シリーズ4作目で長谷部安春監督担当最終作となったこの映画では、ひとつ前の当ブログで触れたようにそれまでと違って藤竜也さんは非暴力主義のソフトな役柄です。ノボ(藤竜也さん)とマヤ(梶芽衣子さん)と静かに話すシーン、ノボが「何でここまでしてくれるんだい?」と尋ねると、マヤは「行ける人間は行った方がいいだろ、それだけさ」と答えます。この台詞に「ここではないどこか」へ行こうとする者への共感と羨望が滲み出る良いシーンでした。さらにここで梶さんが唄う「明日を賭けよう」という曲が素晴らしい!名曲です。 ♪星の孤独を知ったとき はじめて涙が出るという~ という歌詞がこのシーンにピッタリでした。

この作品は音楽面が充実していて、青山ミチさんの「恋のブルース」の他にも、女性ヴォーカルのGS「沢村和子とピーターパン」のステージ演奏が見れますし、「ズー・二ー・ヴー」が「ひとりの悲しみ」を唄うシーンもあります。

この「ひとりの悲しみ」の歌詞を変えて翌年大ヒットしたのが尾崎紀世彦さんが唄った『また逢う日まで』です。(当ブログ2021年6月30日「グループサウンズ的キャスティングの『悪魔のようなあいつ』」もご参照ください) 「ズー・ニー・ヴー」はこの映画の前年1969年に「白いサンゴ礁」のヒットを飛ばしたGSですが、ヴォーカルは町田義人さん。のちに『野性の証明』(1978 佐藤純彌監督)の主題歌「戦士の休息」で復活します。独特の高いヴォーカルで唄う「ひとりの悲しみ」も尾崎さんとまた違う味があります。町田さんをアップで捉えたショットもあったと記憶しています。

それから、太田とも子さんが2曲歌っています。太田とも子さんは梶芽衣子さんの実妹です。梶さんは1969年にマキノ雅弘監督のすすめで改名する前は本名の「太田雅子」で活動していました。さて、太田とも子さんがこの映画で歌った2曲「恋はまっさかさま」「とおく群集を離れて」とも作曲は宇崎竜童さんです。「ダウンタウン・ブギウギ・バンド」(1973年デビュー)よりずっと前、宇崎さんはまだGS「ガリバーズ」のマネージャーとかやっていた頃でしょうか。まったく無名の頃ですがいい曲です。宇崎さんはこの8年後、俳優として『曽根崎心中』  (1978 増村保造監督)で梶芽衣子さんと共演することになります。(この項、続く) (ジャッピー!編集長)