引き続き、当ブログ2021年12月19日に書いた「『野良猫ロック・セックスハンター』に暗喩される、日本の植民地的状況」を以下に再録します。

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ひとつ前の当ブログの続きです。

『野良猫ロック・セックスハンター』(1970 長谷部安春監督)の中で、藤竜也さんが扮した不良グループのボス「バロン」は「混血児狩り」を指揮する冷酷な男ですが、恋人のマコ(梶芽衣子さん)を抱くことができません。実は、バロンは性的不能で、回想シーンで語られるその原因は幼い時に目の前で自分の姉が黒人兵にレイプされるのを見たことにあります。しかも、その時に姉が犯されながら愉悦の表情を浮かべていたのが二重にトラウマになっていて、米兵よりも、凌辱された女性、さらにその結果として生まれる混血児に憎悪が向かうのです。

この屈折したキャラクターが、後年1975年に放映されたテレビドラマ『悪魔のようなあいつ』で、やはり不能者で沢田研二さんにホモセクシャルな愛情を示しながら自分の妻だった女を抱かせる藤竜也さんの役に重なるのです。(このことについては当ブログ2021年10月24日「『悪魔のようなあいつ』はジュリーのヌードが多かった印象」でも触れていますのでお読みください)

この「バロン」のトラウマと憎悪は、米軍基地を抱えた日本の怒りが凌辱者・アメリカへ向かわず、やり場のない怒りを「支配されている者同士」がぶつけ合う状況を鋭く暗喩しています。まさに、基地の街・立川を舞台に、日本の植民地的状況を映し出しているのです。そして、この映画から50年以上経った今も沖縄を始め「基地」は存在し、「日米地位協定」も改訂されることもないのです。いまだに「植民地」として凌辱されているのです。

映画は、生き別れた妹を探しに街にやって来た混血児・カズマ(安岡力也さん)に協力するうちに惹かれていくマコをはさんで、バロンはカズマを敵視し、徹底的に痛めつけます。(縛られたカズマをジープで引きずるリンチが凄絶でした) そして最後は、廃墟となった飛行場の監視塔でのバロン対カズマの一瞬の銃撃戦となります。

黒の帽子、パンタロン姿がカッコいい梶芽衣子さん、精悍な男前の安岡力也さんがデュエットする名曲「禁じられた一夜」も聴けるし、まだ5人組だったゴールデン・ハーフが歌うシーンもレアです。

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上に書いたように、この映画から50年以上も経っているのに、状況は何も変わっていません。あっさりオスプレイも飛行を再開しました。辺野古の海も埋め立てられていきます。そして武器をアメリカの言うまま爆買いです。いまだに、実質はアメリカ合衆国「日本」州なんでしょうか。(ジャッピー!編集長)