ひとつ前の当ブログで、長谷部安春監督の技巧にかつて助監督としてついた鈴木清順監督の影響が垣間見えるという話を書きました。

取り上げた『野良猫ロック・セックスハンター』(1970 長谷部安春監督)について書いた、当ブログ2021年12月19日に「『野良猫ロック・セックスハンター』で藤竜也さんが演じた“バロン”の不気味な存在感」を以下に再録します。

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ひとつ前の当ブログで、『女番長 野良猫ロック』(1970 長谷部安春監督)に触れました。(この映画にはモップスや、アンドレ・カンドレ時代の井上陽水さんが出演していて、そのことは当ブログ2021年6月28日にたっぷり書きましたので、ご参照ください)

劇中、何とか暴力団に入ろうとボクシングの八百長に関わる男をかつての主演スター・和田浩治さんが演じ、暴力団の下部組織の不良グループのリーダーが藤竜也さんというキャストです。なんとなく、和田さんの方が年上という感じを持ってしまうのは、和田さんが1959年15歳で主演デビューしたのでキャリアが長いベテランの印象があるからでしょう。でも、この『女番長 野良猫ロック』の時点でまだ26歳。一方の藤竜也さんは日本大学の学生だったときにスカウトされ、1962年にデビュー。既に20歳でしたから、入社はあとでも藤さんの方が年上。しかも、和田さんと違い、延々と仕出しや脇役をやっている時期が長く、「ニューアクション」の時期になって、ようやく目立つ役がつくようになったのでした。

『野良猫ロック』シリーズ全5作に出演した藤さんですが、ベスト・アクトは何といっても、3作目『野良猫ロック セックスハンター』(1970 長谷部安春監督)で演じた「バロン」という役です。作品的にもシリーズ中でも最高傑作と評価されています。

『女番長 野良猫ロック』の舞台は新宿でしたが、『野良猫ロック セックスハンター』は立川が舞台。米軍基地のある街という背景で、藤竜也さんは地元の不良グループ・イーグルスを率いるバロンという人物に扮します。バロンは「混血児」を異常なまでに憎悪し、街で混血児を見かけると、仕事の邪魔をしたり執拗に嫌がらせをしかけます。『女番長 野良猫ロック』にも、八百長を頼まれるボクサー役で出演したケン・サンダースさんは、イーグルスのメンバー・岡崎二朗さんの恋人と会っていたというだけで袋叩きにされて、街から追い出されてしまいます。藤さん演じるバロンは手下たちに「混血児狩り」を命じ、街からハーフを一掃しようとします。ちなみに脚本の原題は「人狩り(マンハント)」でした。

バロンはナチスみたいな上着を着て、いつも片手にステッキ、片手に百科事典みたいな本を携帯していてブキミな存在感を発揮します。不良少女グループのリーダー・マコ(梶芽衣子さん)を恋人にしていますが、いいムードになってもバロンはその本に読みふけっています。マコは「何であたしを抱かないの?」と訊きますが、バロンは無言です。(この項、続く) 

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次のブログに続きます。(ジャッピー!編集長)