このところの当ブログで、井上陽水さんが「アンドレ・カンドレ」という名前でデビューし、『女番長・野良猫ロック』(1970 長谷部安春監督)の中で「カンドレ・マンドレ」を歌っているという話を書きました。

1970年のゴールデン・ウイークに公開された『野良猫ロック』シリーズの第1作『女番長 野良猫ロック』の併映作は『ハレンチ学園』(1970 丹野雄二監督)でした。スカートめくりとか、当時のPTAの方たちの顰蹙をかった永井豪さんの原作の映画化です。

マンガの実写映画化となると、キャスティングが問題です。小説とは違って、すでに画としてヴィジュアルとしてイメージが出来ていますし、まして『ハレンチ学園』のような極端なキャラクターを誰が演じるか難しいものです。その中でも、もっとも異様なキャラである「ヒゲゴジラ」を演じたのが藤村俊二さん(2017年1月25日、82歳でお亡くなりになりました)でした。このキャスティングをした人はエライ!と言いたくなるほど見事な人選です。ちなみに「マカロニ」役は日活生え抜きの宍戸錠さん、さすがにバッチリ決まっていました。

その前から名前を知られていた藤村さんですが、意外なことに『ハレンチ学園』が藤村俊二さんの映画デビュー作です。僕も藤村さんといえば、まずは『巨泉・前武 ゲバゲバ90分』とかテレビの印象が強かったです。テレビというメディアで活躍された藤村さんですが、数少ない主演映画のひとつが『喜劇・猪突猛進せよ‼』(1971 前田陽一監督)です。

この映画では、藤村俊二さんと石坂浩二さんが兄弟の役で、藤村さんが気の弱い兄・太郎、石坂さんが対照的に積極的な性格の弟・次郎を演じます。太郎には倍賞美津子さん演じる恋人がいるのですが、押しの弱い藤村さんにちょっと不満を抱いています。はじめは兄の恋人と知らずに倍賞さんに一目惚れした次郎は猛アタック、太郎が勤めるCM会社の財津一郎さんにしつこく言い寄られて困っている倍賞さんを、恋人のフリして助けてあげたりします。

一方、童貞の藤村さんは女性経験をしようとキャバレーの女の子とホテルに入ろうとしたところを倍賞さんに見つかり、婚約破棄されてしまいます。ラストは、倍賞さんをあきらめきれない太郎が車を飛ばして、次郎と倍賞さんの結婚式に乗り込んで倍賞さんを略奪……という『卒業』(1967 マイク・二コルズ監督)のパロディになっています。もっとも、こちらは次郎と倍賞さんの結婚式場をそのまま太郎と倍賞さんが使うというオチになります。

『喜劇・猪突猛進せよ‼』は控えめで気弱な太郎を勇気づけるようなタイトルですが、元々表に出たり映ったりするのが嫌いで「ヒョイ」と消えてしまうところから「おヒョイさん」と呼ばれた藤村さんにピッタリの役でした。そして、結果的に二枚目の石坂さんがフラれる役というのも面白いです。また兄弟の母親を演じるミヤコ蝶々さんも絶品です。

そして、ヒロインの倍賞美津子さんは劇中でCMに起用され、ビキニの水着でダイナマイト・ボディを披露してくれますし、プロレス好きという設定でテレビでアントニオ猪木の試合を観ながら熱烈応援しているシーンがあります。この後、実生活で猪木さんと結婚される倍賞さん、この撮影時にはもう付き合っていたのでしょう。(ジャッピー!編集長)