既に当ブログに書きましたが、2019年6月16日(日)にFM東京でオンエアされた『村上RADIO』第6回がビートルズ特集でした。

そういえば、村上春樹さんの『騎士団長殺し』で、主人公が東北を彷徨しているとき、ファミレスに入るとストリングスが演奏する「フール・オン・ザ・ヒル」が流れている場面がありました。主人公は「その曲を実際に作曲したのがジョン・レノンだったかポール・マッカートニーだったか、どちらか思い出せなかった。たぶんレノンだろう。私はそんなどうでもいいことを考えていた。他に何を考えればいいか、わからなかったからだ」と思うのです。「フール・オン・ザ・ヒル」はポールの曲で、村上さんが知らないはずはないし、どうしてこういったモノローグを主人公にさせたのか、何か意図があるのかと読みながら考えてしまいました。ハルキ学者の人たちはすでに解析されているかもしれませんが。

ともかく、この番組では今までオリジナルよりレアなカヴァー・ヴァージョンをかけることが多いのですが、『村上さんのところ』(村上春樹 新潮文庫)の中でも、ジョギング用のi-podに何を入れてますかという読者の質問に「僕はトリビュート・アルバムから抜粋して入れることが多いです。たとえば、オリジナルのビーチ・ボーイズとかビートルズなんか、もう『耳だこ』になっていますよね」と答えています。

僕はビートルズ大好き人間でもちろんオリジナル・ファーストで聴いてますが、カヴァーを聴くのも好きで、よく聴くCDが『レノン=マッカートニー・ソングブック』です。青いジャケットの「Vol.1」がR&B、ジャズ・ヴォーカル系、赤いジャケットの「Vol.2」がポップ、ロック、カントリー系のアーティストによるビートルズ・ナンバーを集めたコンピ盤です。

かなり前に2枚一緒に買って甲乙つけがたいのですが、「青盤」の方が気に入っているかなあ。特に、エラ・フィッツジェラルドさん、アレサ・フランクリンさん、サラ・ヴォーンさん、チャカ・カーンさんなど黒人女性ヴォーカリストの表現力には圧倒されます。サラ・ヴォーンさんが歌う「フール・オン・ザ・ヒル」、「ゲット・バック」、チャカ・カーンさんがファンク調で歌う「恋を抱きしめよう」など素晴らしすぎです。他にも必殺のレイ・チャールズさんの「レット・イット・ビー」もあるしね。

「赤盤」にもリンダ・ロンシュタットさん歌う「グッド・ナイト」やエミルー・ハリスさん歌う「ヒア、ゼア、アンド・エヴリホエア」など捨てがたい味がありますが、やや「青盤」の方が分がいいかな。「赤盤」で面白いのは、「オール・アイヴ・ガット・トゥ・ドゥ」をルイーズ・ゴフィンさんが歌っているヴァージョン。ルイーズさんは、キャロル・キングさんとジェリー・ゴフィンさんの娘さんですが、かつて「チェインズ」などゴフィン=キング作品をカヴァーしたビートルズ、この名コンビ「ゴフィン=キング」のようになりたいと「レノン=マッカートニー」というコンビで曲作りを始めたのは有名な話です。両親を目標にした「レノン=マッカートニー」の曲を、その娘さんがカヴァーするという一周まわった連環であります。 (ジャッピー!編集長)