ひとつ前の当ブログに続いて、当ブログ2020年12月18日に書いた「定年55歳の頃、その寿命は」を以下に再録します。

        *        *       *

ひとつ前の当ブログで『見上げてごらん夜の星を』(1963 番匠義彰監督)を取り上げました。定時制高校を舞台にした映画で、松竹時代の菅原文太さんが演じた真面目な教師のあだ名が「カマキリ」だったという話題です。

こういった定時制、夜学を扱った映画に年を食った生徒が登場するというのは定番ですね。『学校』(1993 山田洋次監督)にも田中邦衛さんがそういう役を演じておられました。が、この『見上げてごらん夜の星を』での、伴淳三郎さんは、映画の中では49歳という設定で、名画座で鑑賞した際、僕より年下なのか!と驚いた記憶があります。劇中、伴淳さんが弁論大会で語る「この年で勉強をできて……」というスピーチが感動ですが、この老けっぷり……。49歳といったら、山本昌投手(ドラゴンズ)なんかまだ投げていたもんなあ!  

 昔の映画を観ていて、つくづく「今」との違いを感じるのはそういった年齢のことであります。『黒い画集 あるサラリーマンの証言』(1960 堀川弘通監督)は松本清張さん原作のサスペンスです。ある夜、平凡なサラリーマンが同じ課の女子社員で愛人(原知佐子さん)のアパートに寄った帰り、顔見知りの保険外交官(織田政雄さん)に会います。その後、織田さんが殺人の容疑者になってしまい、織田さんはその日、小林さんに会った、アリバイがあると主張します。しかし、小林さんが織田さんの無実を証明するために「会った」と証言すれば、自分に愛人がいたことがバレて、会社での立場が悪くなる。保身のために嘘の証言をし、無実の男を見捨てる心理サスペンスです。

この中で「俺は今、42歳だ。こんなことで失脚したらどうなる……55歳の定年までつつがなく勤めなければ……」なんてことを呟きます。42歳(松本清張さんの原作では48歳)というのはもう会社生活のゴールが見えてきたあたりなんですね。今だったら、社内でもバリバリ、下手したらまだ若手の上の方ぐらいに見られるかも。ジャニーズなんか40代でもアイドルが成立してるし。

日本人の平均寿命を調べてみると、この映画の公開された1960年は男性65.3歳、女性70.19歳。つまり、55歳で定年退職しておよそ10年が余生だったわけです。こりゃあ小林さんならずとも晩年が心配になります。昔の映画を観るとき、今の年齢感覚で観ると、おかしなことになりますね。

この映画の当時より、男性は15以上も長生きになっているのです。今、60歳が定年とすると余生は20年、65歳定年にしても余生15年。生活環境が良くなったり、医学の進歩とかってのはすごいものですが、制度の方が追い付いていないような気がします。 

        *        *       *

今や、宮崎美子さんみたいに還暦(60歳)を過ぎてもビキニを着てグラビアに出る時代です。昔の人がタイムスリップしてやって来たらビックリですよね。(ジャッピー!編集長)