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2019年2月10日に「文京シビックホール」で開かれた「第92回キネマ旬報ベストテン表彰式」で、『万引き家族』(2018 是枝裕和監督)主演の安藤サクラさんが主演女優賞を獲得しました。主演、助演合わせて5回目の受賞とあって、涙はなく「フワフワした感じ」と述べていたのを覚えています。

そんな安藤さんが涙を流したのは、主演男優賞を受賞した柄本佑さんの横に立ったときです。安藤さん、ご自分の受賞より嬉しかったのか、感極まって泣きじゃくり始めたのです。そして、司会者が柄本さんに「ご夫婦で受賞されたことについてはどんなお気持ちですか?」と訊いて、柄本さんが照れて少し困っていると、安藤さん、「男はそんなこと答えなくていいから!」とおっしゃって止めたのです。この「男をたてる」というような安藤さんの姿勢、何だか、朝ドラ『まんぷく』の福子さんを思わせるものがありました。多分、安藤さんの中に「福子」的なものがあるんだろうと思いました。と、同時に本当に柄本さんのことを愛しているんだなあと感じました。こういう言葉もジェンダー的に「不適切」ななってしまうのでしょうか?

柄本さんはその前年に亡くした母親の角替和枝さんにふれて「和枝さんの口癖は『何でもない日にバンザイ!』だったけれど、今日ばかりは『何でもなくない日でバンザイ!』と言ってると思います」とスピーチされました。また、安藤さんへのサプライズで、奥田瑛二さんからの手紙が読まれるなど、この「映画一家」のハッピーな絆をうかがえました。

次いで登場した助演女優賞の木野花さんもまず「柄本・安藤さんのご夫婦にもらい泣きしました」とおっしゃいました。受賞対象の『愛しのアイリーン』(2018 吉田恵輔監督)に「谷に飛びこむつもりで挑んで、よく生還できたなあと思っています」というスピーチも実感がこもっていました。たしかに凄い映画(たぶんテレビで放映したら台詞は「ピー」だらけになるでしょう)でした! 木野花さん、現在放送中の朝ドラ『ブギウギ』でもいい味を出していますね。

助演男優賞の松坂桃李さんは2011年に「キネマ旬報新人男優賞」を受賞しており、トロフィーを持って「そこから7年分の重みを感じます」と語っていました。その「新人男優賞」は寛一郎さんでした。柄本佑さんは二世俳優ですが、寛一郎さんは三國連太郎さん、佐藤浩市さんのDNAを受け継いだ三世です。『菊とギロチン』(2018 瀬々敬久監督)で監督からしぼられた話をふられて「殺されると思いました」と答えて場内は笑いに包まれました。『菊とギロチン』の主演の木竜麻生さんも「新人女優賞」を受賞。僕は『菊とギロチン』はもちろん『鈴木家の嘘』(2018 野尻克己監督)の木竜さんの演技に大変心を揺さぶられましたのですが、マイクの前に立ち「最初から泣きそうです」と誠実なスピーチをされてますます好感を持ちました。サプライズで花束を持って登場した野尻監督も、木竜さんのポテンシャルを絶賛していました。

そして、特別賞の樹木希林さんに代わって登壇した内田也哉子さんが「映画って毎日食べるゴハンと同じくらい大事なものなんだと思えるようになりました」という言葉がとても印象的でした。残念ながら是枝監督、瀬々監督は欠席でしたが、受賞の言葉が代読されました。映画はまだまだ力があるぞと思える表彰式でした。 (ジャッピー!編集長)