ひとつ前の当ブログで書いたように、1月から「ラピュタ阿佐ヶ谷」で『柳生武芸帳』シリーズ(1961~1964)を連続上映していて、通っている最中です。

主役の「柳生十兵衛」を演じるのは近衛十四郎さんですが、脇役は同じ人が別の役で登場してくるのでいささか混乱します。しかし、当時はまさか後年こうして名画座で連続で上映するなんて想定していないでしょうからね。しかも、映画会社は次々に映画を量産していた時代ですから、俳優のスケジュールも厳しかったのでしょう。そんな中でのキャスティングだから致し方なかったと思います。

のちに「焼津の半次」として近衛十四郎さんと息の合った掛け合いを見せる品川隆二さんは第1作、第2作で十兵衛を狙う霞の多三郎を演じたかと思えば、第4作は十兵衛の弟になり「兄上!」なんて言い、第5作ではまた「霞の多三郎」役に戻って、弟の「霞の千四郎」(松方弘樹さん)と共に十兵衛に敵対します。

その松方弘樹さんも第6作『柳生武芸帳 片目水月の剣』(1963 長谷川安人監督)は島津の若殿、次の第7作『柳生武芸帳 剣豪乱れ雲』(1963 内出好吉監督)は第7作では飛鳥井大納言という青年公卿の役でしたがうまく演技していました。この辺、後に『仁義なき戦い』シリーズ(1973~1974 深作欣二監督)で異なる3役で登場、若い組員、肺病病みの幹部、壮年ヤクザをうまく演じ分けた松方さんを予兆するようです。

こうしたひとりの俳優が違う人物で再登場するのは短期間にシリーズものを作る宿命かもしれませんが、『柳生武芸帳』でせめて一人の俳優で通してもらいたい役があります。柳生家を狙い続ける疋田陰流を率いる山田浮月斉が最大の悪役なのですが、連続ものになっている第1作・第2作では原健策さん(松原千明さんのお父さんですね)が演じていましたが、第4作では山形勲さん、第5作では吉田義夫さん(『悪魔くん』の初代メフィストです)、そして第7作でまた山形勲さんが扮します。山形勲さんは第5作では伊達政宗の役でけっこう印象的でしたから、続けて観るともう大混乱です。

せめて、主人公と敵対する悪のボスは一人の俳優で通してもらうとスッキリしたけどね。『仁義なき戦い』シリーズも、松方弘樹さん、北大路欣也さん、梅宮辰夫さん、渡瀬恒彦さんなど違う役で出てきましたが、山守親分の金子信雄さんは5作通しての登場だったから良かったのです。もし、途中で別の俳優に代わったら、観客もだいぶ調子が狂ったと思います。(ジャッピー!編集長)