ひとつ前の当ブログに続き、当ブログ2022年2月10日に書いた「木下忠司さんの『喜びも悲しみも幾歳月』や『水戸黄門』の原点と言える曲は」を以下に再録します。

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ひとつ前の当ブログで、木下惠介監督の弟で作曲家の木下忠司さんについて書きました。木下惠介監督作品はもちろんですが、実に数多くの映画音楽を手掛けています。

木下忠司さんは2018年4月30日に老衰のため亡くなりました。102歳ですから大往生といっていいと思いますが、その2年前の2016年にフィルムセンターで「生誕100年」を記念した特集上映が行われたとき、車椅子ではありましたがお元気そうでしたので、訃報は残念でした。

当ブログ2021年7月1日に、井上堯之バンドの『太陽にほえろ!』について書きましたが、このテーマ曲は放送時に日本に住んでいたなら知らない人がいませんよね。木下忠司さん作曲の『水戸黄門』のテーマ曲も同じですね。 ♪人生~楽ありゃ~苦もあるさ~ というメロディを知らない人は昭和を生きた世代の中にはいないでしょう。

そして、テレビの『水戸黄門』よりも前、日本映画の黄金時代を知る人であれば、『喜びも悲しみも幾年月』(1957 木下惠介監督)の主題歌も知らない人は皆無でしょう。 ♪おいら岬の~灯台守は~妻とふたりで~ とスラスラ歌えるはずです。この国民的に知られる2つの主題歌のメロディー、どちらもマーチ調で元気が出てくる曲ですが、その原点といえるのが『破れ太鼓』(1949 木下惠介監督)の主題歌ではないかと僕は思います。

この映画は、阪東妻三郎さん演じる頑固親父と振り回される家族を描いたもので、叩き上げで社長にまでなり独裁的な阪妻さんの親父に対して、なかなか意見を言えなかった子供たちが反乱を起こす……という展開が、封建的な社会に対する民主主義というメタファーになっているのです。 ♪朝から夜まで~鳴り通し みんなも今では怖くない~ドンドンドンドコ~ドンドドン~ という主題歌も、専制君主的な親父は時代遅れといった主張がこめられていると思います。映画の中でけっこう繰り返し歌われるので、かなり頭にしみこむメロディーです。

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やがて、木下惠介監督はテレビドラマにも進出して数々の名作を生みますが、もちろんそれらも弟の木下忠司さんが音楽をつけています。昭和の映画からテレビドラマにはたした貢献ははかりしれません。 (ジャッピー!編集長)