ひとつ前の当ブログで、アソー太郎の発言に対し何の抗議のアクションも起こさなかったカミカワ陽子は結局「女性は黙っていればいい」「男に従っていればいい」という地点から動こうとしなかったのだと書きました。

カミカワのこういう姿勢は、社会や職場で理不尽な立場に置かれ苦しんでいる女性たちを失望させたと思います。また、戦後になってやっと「女性参政権」を得るまで闘ってきた女性たちに対しても裏切りだと思います。彼女たちが「女性が政治に参加する」という当たり前の権利を手にするために苦難の活動をしたのに、いまだに「男性優位」にモノも言えない状況を自ら示して恥ずかしくないのかと言いたいです。

『大曾根家の朝』(1946 木下惠介監督)という映画がありました。1946年、すなわち昭和21年という戦後すぐに作られた映画です。舞台となる大曾根家は母親(杉村春子さん)と4人の子ども(息子3人、娘1人)で暮しています。父親がいないこの家に、叔父(小沢栄太郎さん)が何かというと介入してきて事実上、支配しています。この叔父は軍人で、当然軍国主義的で男性優位的な思考です。女性が家長なんて論外とばかりに君臨し、子どもたちの結婚や進路に口を出します。

例えば、娘(三浦光子さん)には婚約している恋人がいるのに、この叔父は勝手に婚約を破棄してしまいます。自分と癒着している軍需産業会社だか何だかの社長の息子と結婚させるためです。息子のひとりは反発して思想犯となり逮捕され、他のふたりの息子は叔父の言いなりに戦地に送られます。次男は絵が好きで画家を志していましたが戦死、末っ子も特攻隊員となり散ってしまうのです。

こうして自分の子どもたちを滅茶苦茶にされても、杉村さん演じる母親は黙っているだけです。そして、いよいよ日本の敗戦となりますが、軍人の叔父は特別なルートで「玉音放送」よりも前に敗戦情報をつかみ、いち早く軍需物資をガメるのです。演じる小沢さんが本当に憎々し気な演技で、僕はずいぶん前に観たのですが強く印象に残っています。

それまで黙っていた母親は、この叔父の悪行についに怒りを爆発させ、「日本をメチャクチャにしたのはあなたたちのような軍人だ。出て行きなさい!」と言い放つのです。まさに、戦争を始めた男たちに従属させられ、何も言えなかった女性がようやく「ひとりの人間」として怒りをぶつけ、言葉を発するシーンは「戦後」という新しい時代の始まりを告げるようでした。

このように男性優位社会で受難を生きた女性たちに対して、カミカワ陽子は恥ずかしくないのかと問いたいです。(ジャッピー!編集長)