ひとつ前の当ブログで、今年の3月22日に74歳で亡くなられた団次郎さんのことを書きました。

団次郎さんが主人公「郷秀樹」に扮した『帰ってきたウルトラマン』のことにも触れましたが、この『帰ってきたウルトラマン』で有名な回が「怪獣使いと人間」です。「ウルトラ」シリーズの4人の作家を取り上げた「怪獣使いと少年」(切通理作さん・著/宝島社)という労作のタイトルにもなっています。

以前も当ブログで紹介しましたが、川沿いに建てられたバラック小屋に老人(植村謙二郎さん)と住む少年が、河原で穴を掘り続けていて、この汚い身なりの少年を周囲の子どもは「宇宙人」と呼んで虐め、大人たちも奇異なものを見るような目を向けます。実は、同居する老人は、昔、地球に観測調査のため来た宇宙人(メイツ星人)で、河原に埋めた宇宙船を探しています。公害による汚い空気のため体を壊した老人に代わって、両親のいない(炭鉱労働者だった父は蒸発、母は病死)少年は同居しながら、宇宙船を探しているのです。

という設定なんですが、かなり残酷な「いじめ」の描写がありました。複数の中学生たちがたったひとりの少年をよってたかって、いたぶるのです。近所の大人たちも陰でコソコソ「宇宙人」と噂し、「排除」するのが本当におぞましかったです。舞台となっている川崎という土地、そして、老人が「金山」という在日朝鮮人を思わせる名前であることから、この「宇宙人」差別が「在日」差別の暗喩であることは明らかです。川崎には朝鮮人だけでなく、沖縄人の集落もありました。朝ドラ『ちむどんどん』の舞台のひとつも鶴見でしたね。当然、「沖縄人」も投影されているのでしょう。

それは脚本を書いたのが沖縄出身の上原正三さんということからも明らかでしょう。メイツ星人が人間に殺されたあと出てくる怪獣の名前は「ムルチ」。これは沖縄にある「屋良漏池(やらむるち)」から来ているのです。こういった「在日」や「沖縄人」といったマイノリティーへの偏見、差別を真正面から取り上げることに、テレビ局の上の方からは相当な反発があったそうです。

この『怪獣使いと少年』が放送された1971年から、52年も経ちました。しかし、相変わらず差別と偏見が蔓延っています。スギタ水脈は差別発言を繰り返し、何の反省もしないし、政権もずっと野放しです。ようやく「技能実習生」制度が見直されることになりましたが、今まで他国から来た人たちに何をしてきたのか。LGBTQの方々を不当に貶める発言をする政治家も多いですからね。この50年、少しも「変わろう」としなかったのがこの国なのです。(ジャッピー!編集長)