ひとつ前の当ブログで取り上げた、水木しげる先生の『総員、玉砕せよ!』はNHKでドラマ化されています。それについて、当ブログ2月28日に書いた「『総員、玉砕せよ!』をメタ構造でドラマ化した『鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争』」を以下に再録します。

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ひとつ前の当ブログで、水木しげる先生が学習雑誌『小学六年生』に掲載した『戦争と日本』(中公文庫『水木しげるの戦場―従軍短篇集』に所収)のことを書きました。

この『戦争と日本』は戦時下の学校や軍隊の様子を描いていますが、ところどころに「ねずみ男」が登場して、補足説明を加えます。同じように、水木しげる先生のマンガのキャラクターが狂言回しのように登場するのが、NHKで放送された『鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争』です。これは、このところの当ブログでも取り上げていた『総員玉砕せよ!』をドラマ化したもので、2007年に放映されました。昨年2022年8月23日に再放送されたのは、昨年が「水木しげる先生の生誕100年」だったからでしょう。

僕も久々に観たのですが、これは面白い構成になっているドラマです。現在の水木しげる先生が自身の軍隊体験を残そうと『総員玉砕せよ!』を描き、それが「戦争ドラマ」として挿入されます。その『総員玉砕せよ!』の部分は原作マンガにほぼ忠実ですが、描いている水木先生が葛藤したり、戦友に会って背中を押される所なども描かれます。そこに時々「鬼太郎」「ねずみ男」「目玉の親父」が登場して突っ込みをいれたりするのです。声をあてるのは、もちろん野沢雅子さん、大塚周夫さん、田の中勇さんです。

このメタ構造がうまく作用していて、水木先生が体験した「戦後」と、生き残って過ごす「戦後」が繋がっていることが伝わってくるのです。現在の水木先生と、『総員玉砕せよ!』のパートの丸山二等兵(水木先生を投影している)の二役を香川照之さんが演じていて、よく水木しげる先生に似せていてさすがの演技です。

そういえば、昨年、この再放送があった頃ちょうど、カガワ照之のホステスさんへのセクハラ事件が報じられていました。カガワ照之が自分の行状を認めて、自身がMCをつとめる情報番組内で謝罪したのが9月2日でしたから、あぶない所でした。(当ブログ2022年10月17日「カガワ照之の情報番組降板の謝罪、これぐらいの演技はお手の物でしょう」ご参照ください)

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この『総員、玉砕せよ!』のNHKドラマ版も秀逸でしたが、今回の『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023 古賀豪監督)も、うまくモチーフに使い、水木しげる先生の思いをこめているのでした。

(ジャッピー!編集長)