ひとつ前の当ブログで書いたように、『リボンの騎士』のサファイアは「宝塚ファン」の手塚治虫さんが淡島千景さんをモデルにしたと言われています。

それも「男役」の人でなく、普段は娘役の淡島千景さんが珍しく男役をやったのを観て「それがとっても魅力的で、男になったり女になったりするのが面白いんじゃないかな」と思ったと言いますから、二重の意味で屈折?した着想だったと思います。

そういえば、今年は手塚先生の『ブラック・ジャック』が50周年ということで、先頃は「AI」と共同しての「新作」が発表されました。僕は『ブラック・ジャック』は大好きで、単行本未収録の何作かを除いて、ほとんど全作を読んでいますが、今回の作品を「新作」と呼ぶのは抵抗があり、まだ読んでいません。

『ブラック・ジャック』に「めぐり会い」という有名な作品があります。ブラック・ジャックが「久々に日本に帰ってきた」如月恵という人物と再会します。ブラック・ジャックの古いアルバムに残った写真を見たピノコは例によって嫉妬しますが、ブラック・ジャックは「この女はかつての恋人だったが、もう死んでいるんだ。これから会いに行くのはこの女性の兄なんだ」と言います。

実は、恵は医大時代の後輩だった女性だったのですが、「子宮ガン」におかされてしまい、ブラック・ジャックが手術をします。絶望的と言われていましたが、ブラック・ジャックは天才的な技術で成功します。しかし、彼女の命を助けるために「子宮」や「卵巣」といった女性の部分を取らざるをえなかったのです。そして、「女でなくなった」恵と別れ、恵は「男性」医者として海外で活躍しているというストーリーです。手術前に「あなたへの気持ちも消えてしまうの?」と言われ、ブラック・ジャックは「そうじゃない」と言ってキスをするシーンもありますが、結局は別れてしまっているのです。

この話なんかは、今読むと、ああ、さすがの手塚先生もこの時代の「ジェンダー意識」はこれが限界だったのかと思います。今、「AI」を使ってリメイクしたら、体は女性でなくなっても、二人はパートナーとして一緒に暮らす展開になるかもしれません。そんなことを、今回の「AI」ブラック・ジャックのニュースを聴いて思いました。(ジャッピー!編集長)