5つ前の当ブログで、八千草薫さんが「宝塚歌劇団」で主演に抜擢されたのは『文福茶釜』で子狸の役だったことを書きました。

八千草さんは戦後すぐの1947年「宝塚」入団組ですが、デビューがもろに戦争にかぶってしまった方もいます。淡島千景さんや久慈あさみさんなどは1941年舞台デビューですから、もろに戦争とオーバーラップしているのです。

淡島さんの初舞台の演目の勇ましい武士を描いたものになり、淡島千景さんは「女役」志望でしたが、鎧を着せられたりしたそうです。そして、すぐに「慰問」に行かされることになり、兵隊が駐屯しているところにテントをはって舞台にしたところで出し物をしたとのことです。

淡島さんが語っていましたが、演目が終わり、次の駐屯地に行くと、必ず前に訪れていた場所が爆撃されていたといいます。「慰問」といっても、命がけです。満州にも「慰問」に行かれたそうで、その当時になると、演目は「軍国の母」の曲に踊りをつけたり、看護婦さんの衣装で踊ったりと華やかな要素がなくなっていたとのことです。

ちょうど今、朝ドラ『ブギウギ』が戦時にさしかかってスズ子(趣里さん)が楽しく歌ったり踊ったりするのを官憲から注意されています。舞台を動きまわることを禁じられ、足元に書かれた四角の枠から出るなと言われたりします。スズ子が属している「梅丸歌劇団」は「大阪少女歌劇団」がモデルですが、「宝塚」も当然、時局に翻弄されていたのです。

少し前の当ブログで、『宮本から君へ』(2019 真利子哲也監督)への「助成金不交付」が違法という判決が出た話を書きましたが、「権力」が文化や芸術に介入するというのは本当に怖ろしいことなのです。ひとつの方向に向かせようという「動き」には、敏感になりすぎるということはないと思います。(ジャッピー!編集長)