ひとつ前の当ブログで、最近「熊」が人里に出没するケースが増えていることを取り上げました。ニュースでは猟友会の方々もインタビューに応えていました。

思い出すのは『マタギ』(1982 後藤俊夫監督)です。タイトル通り、山間部に住む猟師を主人公にしていて、演ずるのは西村晃さんです。顔と背中に巨熊に襲われたときに受けた爪痕が残っている老マタギで、渾身の力で薪を割ったり、マタギ犬に「咬ませる」特訓シーン、そしてラストの熊撃ちのシーンなど、撮影時、西村晃さんは59歳ですが、体をはった熱演です。この映画で「毎日映画コンクール主演男優賞」を獲得されているのも納得です。

もうひとつ、マタギ犬というものはスゴイなあと思った記憶があります。映画の冒頭、マタギ犬の「シロ」が子犬を産みます。数匹は業者が引き取りますが、一匹だけ手元に残したのが「チビ」。西村晃さんの孫が一所懸命に可愛がりますが、ゆくゆくは「マタギ犬」になるよう運命づけられているのです。

ちなみに「チビ」を産んだ後「シロ」は病気(腸捻転だったかな?)になってしまいます。西村さんは孫に「マタギ犬は死ぬところを見られたくないものだ。山に入っていくのを黙って見ていろ……」と教えます。その通り、「シロ」はヨタヨタしながら「死に場所」を探しに山に向かって歩いていくのですが、これが真に迫っていて、何か薬物でも使ってヨタヨタさせているのか?とちょっと心配になってしまいました。

「チビ」は猿のシンバル人形にもビビるような臆病な子犬で、つないだ小熊を相手にするコンテストでも全く怖がって近づこうともしません。孫もその友だちや学校の先生(桑山正一さん)もガッカリします。こんなコンテスト(品評会?)があるとは知りませんでした。「マタギ犬」というのは選ばれし犬なのです。

西村さんもあきらめモードで、「熊の匂いを嗅いだだけで逃げ出す犬もいるからな。まあ、見込みない」と言いますが、あるとき、闘争心を垣間見て「やはりシロの血を引いているわい」と直感します。この辺の「見抜き方」がさすがです。西村さんによる猛特訓が始まりますが、それはもう厳しくて、孫が「じいちゃん、もう止めて!」と言うほどです。まったく、犬もつらいよという感じです。(この項、続く) (ジャッピー!編集長)