このところの当ブログで、「忠犬ハチ公」に関連したことを書いています。

「ハロウィーン」に人が殺到することを警戒した渋谷区では、「ハチ公」像をシートで覆って隠しています。たしかに、あのあたりは待ち合わせの人などでいつも渋滞状態ですからね。

渋谷のシンボルの「ハチ公」は、日本で一番有名な「犬」と言ってもいいでしょう。もちろん映画にもなっています。『ハチ公物語』(1987 神山征二郎監督)です。新藤兼人さんの脚本で、仲代達矢さんが飼い主の上野教授を演じていました。ハチ公が待っている渋谷駅前や周辺の風景が当時の雰囲気を見事に再現していました。CGなんてない時代だから、セットを組んだのですがこれが素晴らしく、目をみはるものがあります。

『ハチ公物語』を撮った神山征二郎監督は犬が苦手だったそうです。子どもの頃に犬に咬まれたことがトラウマになって、それ以来、犬が怖くなってしまったそうですが、フリーの立場で監督をしていた神山さんは引き受けました。せっかくのオファーに、「私は犬が苦手です」なんて言って断ったら、以後の仕事にも関わってきます。それでも一瞬、躊躇したそうですが。

「ハチ公」役の犬は専門のドッグトレーナーにしっかり調教されていたそうで、そのトレーナーが画面に映らない所にいて「待て!」とか「吼えろ!」という合図を出すのです。犬というのは知能的にだいたい人間の三歳児ぐらいで、同じことをやると飽きて「演技?」がダメになってしまうそうです。テストをやらず、いきなり本番やるのがいいのですが、うまく「間」がとれずに何回かテストを繰り返さざるをえないこともあり、苦労したそうです。

ある場面で、2,3回テストを繰り返しようやく快心のシーンが撮れて、チーフ助監督が思わず「良かったよ、ハチ!」と叫んだそうです。すると、その場面に出ていた八千草薫さんが「私のことなんか見ていないでしょ」と怒ってしまったというエピソードもあります。俳優陣は上野教授夫妻を演じた仲代達矢さん、八千草薫さんをはじめベテラン揃いだったこともあり、たしかにスタッフは「ハチ」ばかり見ていたそうです。

その苦労も実って、主演の犬は「ハチ」を見事に演じていました。のちに、リチャード・ギアさん主演の『HACHI 約束の犬』(2009 ラッセ・ハルストレム監督)も観ましたが、『ハチ公物語』の犬の方に軍配をあげたいと思います。(ジャッピー!編集長)