今月のはじめに『アントニオ猪木をさがして』(2023 和田圭介監督)というドキュメンタリー映画を観ました。

アントニオ猪木さんが2022年10月1日に亡くなられて1年ということでの公開でしょう。冒頭、プロレスに入る前の猪木さんが働いていたブラジルのコーヒー農園を訪ねます。猪木さんが育ち、見たであろう風景の中、当時の猪木少年を知る日系ブラジル人のお年寄りが回想します。

この感じで、猪木さんの人生を辿っていくのかと思ったら、意外な展開?でした。以後、いろいろな人が猪木さんを語るのですが、猪木さんのすぐそばにいた人へのインタビューが少なかったように思いました。プロレスラーの方も何人か登場しますが、藤波辰爾さん、藤原喜明さんぐらいで、あとは「猪木さんと直接的な関わりのなかった」いわば「孫弟子」の世代の人でした。猪木さんのファンの方には物足りない人選だったのではないでしょうか。物足りないといえば、試合の映像も思いのほか少なかったです。これはもしかしたら、映像使用の「権利」関係がからんでいたのかもしれません。

僕としては、古舘伊知郎さんや倍賞美津子さんの話とかも聴いてみたかったです。猪木さんは「毀誉褒貶」の多い人物だったので、ドキュメンタリー映画とはいえ、触れられていない部分も多かったように思います。そういう意味では「アントニオ猪木」という人物の実像に肉薄したとはいえません。

映画の中で、オカダ・カズチカさんは「猪木さんは誰にも捕まえられない人」というようなことを言ってましたが、案外これが言い当てているような気がしました。結局、「猪木寛至」さんという男が演出した「アントニオ猪木」は、周りの人には「表面」しか見えていなかったのかもしれません。(ジャッピー!編集長)