ひとつ前の当ブログに続き、当ブログ1月21日に書いた「1968年、ローリング・ストーンズ『ベガーズ・バンケット』と、表現の弾圧」を以下に再録します。

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ひとつ前の当ブログで、1968年のチェコスロバキア、自由と民主化を求める「プラハの春」で、マルタ・クビショバさんがチェコ語の歌詞をつけ歌った「ヘイ・ジュード」が革命のシンボル曲になったという話を書きました。

ビートルズのライバル、ローリングストーンズの1968年はどうだったでしょう。アルバム「ベガーズ・バンケット」をリリースしましたが、彼らが考えたジャケット・カヴァーは「トイレの落書き」でしたが、レコード会社に差し替えられてしまいます。僕も「ベガーズ・バンケット」をレコードで買ったときは、「ベージュの地に筆記体の文字だけ」という差し替え後のジャケットでした。オリジナル・カヴァーの「トイレの落書き」は、CDになってようやく日の目をみました。

1968年、アルバム発売当時のデッカ・レコードの上層部からOKが出ず差し替えられたわけですが、ミック・ジャガーさんはこの対応について「このジャケットが不快感を与えるものだとは全く思えない。デッカは、トム・ジョーンズのレコード・ジャケットに原爆の写真を使っているじゃないか。その方がずっと不快感を催させると思うね」と痛烈なデッカ批判を新聞記者に述べています。ジャガーさんは、レコードを「子供向きではありません」とスタンプを押した茶色の紙袋に入れて発売すればいいではないかと提案、デッカに要求したが通りませんでした。

ジャガーさんはよほど頭にきたようで「このままで済むと思ったら大間違いだぜ。俺には、奴らに復讐するアイデアの1つや2つはあるからな」と語ったといいます。実際、ローリング・ストーンズの次のアルバム「レット・イット・ブリード」がデッカ・レーベルでの最後のスタジオ録音盤となり、1971年から自らの「ローリング・ストーンズ・レーベル」でレコードを制作することになります。その第1作目「スティッキー・フィンガーズ」はアンディ・ウォーホルさん作のジッパー付きのアルバム・ジャケットで度肝を抜きました!

そんな「ベガーズ・バンケット」のA面1曲目に入っている「悪魔を憐れむ歌」は、「ケネディ暗殺」などを歌詞に盛り込み、戦争や殺し合いの続く人間界の狂気をあばきたてます。また、B面トップに収録されている「ストリート・ファイティング・マン」は路上での暴動を描くもので、激化するベトナム戦争に抗議してアメリカ大使館前で何万もの若者がデモをした時に、ジャガーさんも参加したことをモチーフに書かれた曲と言われています。アメリカの一部の州では、この曲が革命の気運を煽りたてるとして放送禁止になりました。世界中で若者たちが体制に異を唱えた変動の時代だった1968年、社会性の強い内容を持つアルバムにレコード会社が入れた横槍を、ジャガーさんは自分たちの表現に対する「官憲からの弾圧」と見なしたのでしょう。 

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ローリング・ストーンズ、もうすぐ(10月20日)ニュー・アルバム出ますね。スタジオ録音アルバムとしては2005年以来、何と18年ぶり。そして先行シングルのタイトルは「アングリー」。「怒り」を持って転がり続けていることに敬服です。(ジャッピー!編集長)