ひとつ前の当ブログで、『雲ながるる果てに』(1953 家城巳代治監督)を取り上げました。

『零戦黒雲一家』(1962 舛田利雄監督)のラストで石原裕次郎さんと二谷英明さんが交わすセリフ「今度は戦争のない国で会おうな」というのは、それより先、『雲ながるる果てに』の劇中、高原駿雄さんも口にしたセリフでした。

『雲ながるる果てに』の脚本チームのひとり、直井欽哉さんは「特攻」の生き残りなので、実際にこういう言葉を残して死んでいった方はいたのでしょう。死を前にして、自分には訪れない未来を思いながらどんな気持ちでこういう言葉を残したのかと思うと胸が痛くなります。

また、『雲ながるる果てに』にはこんな怖ろしいシーンもあります。「特攻」を送り出す側の上層部は、「今度の出撃で敵に“当たる”のはいいところ2割ぐらいだろう」とか、まるでギャンブルみたいに予想したり、彼らにとって若者たちひとりひとりの命なんか「消費」する数でしかないのです。完全に特攻兵たちを「モノ」扱いです。

さらに、幹部の岡田英次さんに至っては、特攻の失敗の報告を聞かされても「いくらでも特攻兵の補充はいるんだ」と冷徹に言い放ちます。この岡田さんの台詞のあと、机をならべる小学生たちの映像がインサートされるのです。この当時の「少国民」と呼ばれた子どもたちを「消費物」として見ているおぞましさが伝わってきます。

そんな「少国民」や「軍国少年」を生み出し、「お国のために命を捧げる」ことに何の疑問も持たない子どもたちを作り出してしまったことの反省から「教育基本法」があったのに、アベ晋ゾーは第一次政権の2006年、戦後初めて「愛国心」を盛り込みました。

また、2012年2月には大阪のシンポジウムで、アベ晋ゾーは「教育に政治家がタッチしてはいけないのかといえば、そんなことはないわけですよ。当たり前じゃないですか」なんてことを、ドヤ顔でほざいていたのです。「教育」という、ある意味、国の根幹になるいちばん大事なところをぶっ壊そうとしたこの男は本当に許せませんね。

アベ晋ゾー以来、この国の教育がいかに蝕まれているかを描いたドキュメンタリー映画『教育と愛国』(2022 斉加尚代監督)については当ブログ2022年5月19日~20日をお読みください。(ジャッピー!編集長)