このところの当ブログで、8月14日放送のNHKスペシャルドラマ『アナウンサーたちの戦争』と重なる部分があった『日本のいちばん長い日』(1967 岡本喜八監督)を取り上げています。

東宝創立35周年記念映画として製作された『日本のいちばん長い日』はオールスター・キャストということもあり、大ヒット。これを第1作として東宝は毎年8月の「終戦記念日」近辺に「8.15シリーズ」と銘うって、戦争に関する映画を公開します。

その第4作にあたるのが『激動の昭和史 軍閥』(1970 堀川弘通監督)です。軍部が台頭し、大陸の利権を狙う財閥と結託し戦争に突き進んでいく様相が当時のニュース映像なども挿入しながらてドキュメンタリー・タッチで描かれています。

5つ前の当ブログに書いたように、『日本のいちばん長い日』で「敗戦」に納得せず上官(島田正吾さん)を殺してしまう青年将校のひとりを黒沢年男さんが演じていましたが、『激動の昭和史 軍閥』でも黒沢年男さんは熱演を見せます。

映画の終盤、既に敗戦が確実という段階になっており、新聞記者の加山雄三さんが大本営の発表は戦局の真実を隠していることを読者に伝えようと述べます。すると、黒沢年男さんが演じる特攻隊員が「お前ら新聞が、勝ってるときは東條、東條と言って持ち上げて、負け始めるともう戦争やめろと。じゃあ、勝てばいいのか! 国民を好戦的にしたのはお前ら新聞だぞ!」と叫ぶのです。

『日本のいちばん長い日』で放送局には乱入してきた青年将校に一歩も引かず立ちはだかる加山雄三さんですが、こちらの役では圧倒され何も言えません。痛いところを突かれた……という思いがあるからです。

この『激動の昭和史 軍閥』は加山さんが演じた毎日新聞の記者の回想録が元になっていたと思います。自分たちマスコミも戦争に加担していたことを振り返り、二度とあってはいけないと反省しているのです。『アナウンサーたちの戦争』のNHKアナウンサーたちが「放送」で国民を騙し、煽ったのと重なります。

これも単に遠い昔の話と言い切れないのは、現在のメディアが官邸やその周辺に脅されてすっかり腰が引けてしまい、「権力のチェック」という本来の役割を怠っているのををイヤというほど見ているからです。「新しい戦前」(by タモリさん)はじわじわと足元に忍び寄っているのです。(ジャッピー!編集長)