ひとつ前の当ブログでちょっと触れた、5歳の女の子を虐待し、「ゆるしてください」という文章を書かせ、死に至らしめた事件のことを覚えていますか。

この目黒区で起きた事件で、船戸結愛ちゃんが義父から虐待を受けて亡くなったのは2019年3月2日です。それから半年後、ちょうど朝ドラ『なつぞら』が終わる頃の同年9月に裁判があり、ひとつ前の当ブログで書いたように、『なつぞら』のヒロイン・なつ(広瀬すずさん)が戦災孤児で血の繋がっていない家族に愛情深く育てられる話だったこともあって、記憶がつながっているのです。

本当に怒りを禁じえない悲惨な事件ですが、この父親の公判に、自身も被告となっている母親が証人として出廷しました。この男は結愛ちゃんをサッカーボールのように力いっぱい蹴っていたとか、39日間のうち2~3度しか外出させなかったとか、食事制限を課し放置していたなど証言で明らかになりました。こんな小さな女の子に対して、まさに鬼畜のような所業です。5歳の子どもですから逃げ場がありません。本来は守ってもらうべき家で地獄のような日々、どんなに辛かったことでしょう。

太ももにアザがあることを聞かれ「誰にされたの?」と訊かれても、結愛ちゃんは「お父さんがした」とは言わなかったそうです。そんなことを言ったら、またさらに虐待されると思っていたのでしょう。母親は夫の支配下にあって逆らえなかったといいますが、何とかならなかったのでしょうか。『鬼畜』(1978 野村芳太郎監督)の中の台詞じゃないですが「あんた、親だろ!」と言ってやりたくなります。(当ブログ7月23日参照)

結愛ちゃんはこの年の4月に小学校に入学するはずだったのです。どんなに楽しみにしていただろうか、お友だちと遊んだり、勉強したり、そしてどんな未来が広がっていただろう……と思うと本当に胸が痛みます。そういうことをこの夫婦は想像もしなかったのかと思います。

『なつぞら』で戦災孤児の「なつ」を育てた柴田農場の人々もそうですが、その頃に観た『劇場版 そして、生きる』(2019 月川翔監督)に印象的なセリフがありました。「親が揃っていなくても、そばにいる人がちゃんと愛してあげればきちんとした大人に育つんだ……」といった科白でした。本当の親子でなくても、いちばん近くにいる人が愛を注いで、いつも見守っているだけでいいんです。

そういったささやかな幸福すら得られず未来を奪われた結愛ちゃんが本当にかわいそうです。僕は、4月の入学式シーズンになって、街で新しいランドセルを背負って嬉しそうに学校に通う1年生たちを見かけると、結愛ちゃんや悲惨な目に遭っている子どもたちのことを考えてしまいます。(ジャッピー!編集長)