6月16日にダニエル・エルズバーグさんが膵臓がんのため、92歳で亡くなりました。

エルズバーグさんは海兵隊勤務のあと、国防総省などに勤め、政権が隠蔽し続けたヴェトナム戦争に関する機密事項を記した文書をリークした方です。この文書には、ヴェトナムでの戦局が思わしくないにも関わらず、その事実を隠して戦争を継続していたことなどが盛り込まれていたのです。例えれば、敗色が濃厚な戦争の実情を「改ざん」していた大日本帝国の「大本営発表」みたいなものです。

エルズバーグさんがこの文書を提供した新聞社が舞台の映画が『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017 スティーブン・スピルバーグ監督)です。この文書の提供を受けたワシントン・ポスト紙には政府からの圧力がかかります。連邦裁判所から「記事差し止め」の命令が下されるのです。トム・ハンクスさん演じる編集局長は「政府の顔色をうかがうようではワシントン・ポストは死んだのと同じだ」といいますが、経営者側は政府からの法的措置を怖れます。政府に逆らって掲載したら法律問題になって、潰れてしまうかもしれません。社内でも掲載か否か紛糾します。最終的にメリル・ストリープさん演じる社主が掲載を決断します。 

この役を、2017年のゴールデングローブ賞の授賞式で公然とトランプ批判のスピーチをしていたメリル・ストリープさんが演じたというのも意味深いですね。スピルバーグ監督は、当時のトランプ大統領へのアンチとしてこの映画を撮ったのでしょう。

社主による決断が下され、映画は必死にタイプをうつ記者たち、活字を組む人たち、印刷工場の人たち、刷り上がった新聞をヒモでくくり、トラックで運ぶ人たちと描写がたたみかけられます。ここに、この国を作っているのはこういう無名の人々、労働者なんだという作り手の思いが表されていると思います。

劇中、「新聞が仕えるのは国民であって、執政者ではない」というセリフもありました。僕は赤木俊夫さんがモットーにしていたという「私の雇い主は国民です」という言葉を思い出しました。アベに忖度し、公文書を改ざんし真実を隠蔽する財務省の連中は、恥ずかしくないのかと思います。

エルズバーグさんの勇気ある「内部告発」によって、世論における反戦の空気が高まり、ヴェトナムからの米軍撤退に繋がりました。心よりご冥福をお祈りいたします。(ジャッピー!編集長)