ひとつ前の当ブログで、真屋順子さんが出られた映画として『無頼』シリーズ第2作の『大幹部・無頼』(1968 小沢啓一監督)をあげました。

渡哲也さん主演の『無頼』シリーズは全6本が立て続けに公開されましたが、『大幹部・無頼』は第1作の『無頼より 大幹部』(1968 舛田利雄監督)の純然たる続編で、話がつながっています。(『大幹部・無頼』の冒頭に第1作目のあらすじがついてます) あとの4本はそれぞれ独立したストーリーになっています。

『大幹部・無頼』は、作りこまれた脚本と、ラストの下水における死闘など鮮烈な映像でまぎれもなくシリーズ最高傑作ですが、主演の渡哲也さん&松原智恵子さんを脇で支える役者たちの好演も光ります。1作目『無頼より 大幹部』で、幼い頃からの友人である待田京介さんが殺され、その愛人(松尾嘉代さん)を助けた五郎(渡哲也さん)は松原さんと付き添わせて松尾さんを青森に実家に送ります。

待田さんを支えるため体を売っていた松尾さんは胸を病んでいます。その治療費のために五郎は嫌気のさしていたヤクザ稼業に引き戻されます。この病身の女性を演じた松尾嘉代さん、また、傷ついた渡さんを助ける娼婦の役で、僕のミューズ・芦川いづみさんが出ておられますが、この薄幸の女性を演じたお二人のはかない美しさが忘れられません。

真屋順子さんの役柄も男たちの闘いの中で不幸を背負う女性です。五郎が雇われたヤクザ一家と敵対する組の幹部が二谷英明さんで、何とか抗争をおさめようとする良識派です。二谷さんの妻を演じたのが真屋さんで、ヤクザの女房ですが平凡な奥さんというたたずまいです。二谷さんはやはり稼業に嫌気を覚え足を洗おうと考え「最後の仕事」と約束を取り付け、殴り込みをかけますが失敗、命を狙われ逃亡の身となります。

五郎が「早くこの街を離れろ」と忠告しますが、家族思いの二谷さんは一目、妻子に会おうと家に近づいた所を待ち伏せしていた刺客に殺されます。死体の横に子供へのおみやげのケーキがグチャグチャに踏み潰されているのが悲惨です。これは、のちの『仁義なき戦い』(1973 深作欣二監督)のラスト近く、松方弘樹さんが子供に買ってあげようとオモチャ屋さんに立ち寄って殺されるシーンがよく似ています。

『無頼』シリーズの原作者・藤田五郎さんは、後年の渡哲也さんが東映で主演した『仁義の墓場』(1975 深作欣二監督)の原作者でもあります。『無頼』シリーズは「実録路線」の遠い先駆という言い方もできますね。(ジャッピー!編集長)