このところの当ブログで、『巨人の星』で星飛雄馬の二軍時代に描かれたエピソードについて書きました。

多摩川グランドに練習に行くバスの中で先輩選手たちが一人も座席につかず、皆「つま先立ち」で立って体を鍛えていたなんてエピソードは鮮明に覚えていて、僕は電車に乗っているときによく試していました。最近は歳のせいか、普通に立っていてもよろける「ていたらく」なのでやってませんが……。

しかし、実際のジャイアンツ二軍は特に近年、緩みまくっていて不祥事続きです。「球界の盟主」じゃなくて「球界の迷主」といった方が相応しいし、ハラ辰徳の暴力団に利益供与なんて、「巨人軍は紳士たれ」と程遠い振る舞いです。

そういえば、『巨人の星』の飛雄馬の父・星一徹がジャイアンツを去ることになったのも、この「巨人軍は紳士たれ」という掟?のせいでした。戦前の巨人軍で「幻の史上最大の三塁手」と呼ばれた星一徹は戦争で負傷し肩を痛め、一塁への速い送球ができなくなります。そこで編み出したのが「魔送球」です。

「魔送球」は一塁に向かうバッターランナーに当るようなところから急激に曲がる送球です。その大きな曲がり方は今、流行りの「スイーパー」みたいな感じですかね。この送球にひるんでスピードを緩めたランナーをアウトにするわけです。同僚の川上哲治に「当たらないと分かったら、走者は怖がらないだろう」と問うと、一徹は「たまに本当にぶつけてやればいいんだ」と荒っぽいことを言います。

これに対し、川上がそんなことは「巨人軍の選手としてあるまじきプレイ」だというようなことを言って、一徹に「辞める」ように勧告します。一徹もそれを受け入れ退団してしまうのですが、川上は主力とはいえ一選手に過ぎません。注意するぐらいならまだしも、同僚に「クビ」を言い渡す権限はないでしょう。それに、エラそうに「君には巨人軍にいる資格がない」なんて言うところが、子どもの頃から本当にイヤでした。元々、ジャイアンツ嫌いだったけれど、この『巨人の星』に描かれる権威主義、教条主義的気風がますます嫌悪感を強くさせたのでした。(この項、続く)

(ジャッピー!編集長)