ひとつ前の当ブログで、沢田研二さんと菅原文太さんが共演した『太陽を盗んだ男』(1979 長谷川和彦監督)を取り上げました。

この映画の公開から44年の月日が経ちました。その当時(昭和54年)と、今の令和の世を対比してみましょう。ジュリーが扮した「原爆をアパートの部屋で作った物理教師」は、自分の交渉相手として、文太さん演じる「山下警部」を指名します。映画の冒頭、生徒を引率して社会科見学に行った帰りにバスジャックされ、その際、命がけで事件を解決した山下警部に惹かれるものがあったからです。

このバスジャック犯の老人(伊藤雄之助さん)は、「天皇陛下に会わせろ!」と要求、皇居前での攻防になりますが、ここのゲリラ撮影がすごい! 今では絶対出来ないように思います。というか、「原爆を作って国家を要求を突きつける」という企画段階で通らないでしょう。たぶん、映画の制作費を出す製作委員会となるスポンサーが見つからないと思います。当局からにらまれたり、炎上したりするリスクをおかさず「無難」な内容でという風潮ですから、作り手の創造的自由を発揮しにくい時代になっているといえるかもしれません。

ジュリーは山下警部に対し、自らを「9番」と名乗ります。これは当時、「核」を保有していた(あるいは、保有しているとされていた)のは、アメリカ、ソ連(今のロシア)、中国、フランス、イギリス、インド、南アフリカ、イスラエルの8か国でした。「核保有国」が8か国あったので、ジュリーは「9番目の核所有者」という意味です。

現実ではその後も、パキスタン、カダフィー大佐時代のリビア、イラン、イラクなど核開発、保有の疑いは絶えることなく、ここ最近は「北朝鮮」の度重なるミサイル実験、ロシアも核使用をちらつかせています。「核廃絶」とはほど遠く、『太陽を盗んだ男』から40年以上経っても「核」の恐怖は続いています。まったく、人間というものは何も学んでいないのですね。(この項、続く) (ジャッピー!編集長)