ひとつ前の当ブログに書いたように、「日本アカデミー賞」が近年、ジャニーズ系のタレントを優遇しているのは、テレビ局や映画会社の大人の事情も大きいでしょう。

芸能人のスキャンダルが好きなワイドショーが、ジャニーズ元社長による性被害を全く報じないのは、「おたくの局にはジャニーズのタレントを出さないぞ」と言われるのが怖いからでしょう。「電通」の悪行も「広告を出してもらえなく」なるのを怖れて報じないのと同じです。

なので、2020年3月6日(金)に発表された「日本アカデミー賞」には驚きました。このときの最優秀作品賞は『新聞記者』(2019 藤井道人監督)、シム・ウンギョンさんと松坂桃李さんも最優秀主演女優賞、最優秀主演男優賞を獲得しました。僕は、この『新聞記者』がノミネートされた時点でもビックリしたので、さらに「最優秀」を受賞したというのは大きな驚きです。

既に書いたように、この「日本アカデミー賞」の今までの受賞作やノミネートの流れを見ると、この手の反政権的な映画が獲得するのは極めて異例なのです。これは、そもそも「日本アカデミー賞」が大手映画会社の肝いりで始まったものなので、その社員などがほとんどの票を握っているからです。必然的に大手で製作された映画が「持ち回り」のように受賞するようになっていて、独立プロやインディーズの作品は冷遇されることが多かったのです。

この前年は『万引き家族』(2018 是枝裕和監督)が最優秀作品賞でしたが、カンヌ映画祭のパルムドール受賞もあったので大方の予想通り。一方では『菊とギロチン』(2018 瀬々敬久監督)や『寝ても覚めても』(2018 濱口竜介監督)、『きみの鳥はうたえる』(2018 三宅唱監督)といったミニシアター系作品はノミネートもされませんでした。それでも『カメラを止めるな!』(2018 上田慎一郎監督)がノミネートされたのはさすがに社会現象にもなった大ヒット作を無視できなかったのでしょう。

大手会社主導となると、当然のように政権への目配りというか気をつかうものにもなってしまいます。2015年度には、キネマ旬報ベストテンで2位に100点以上!という大差をつけてぶっちぎりの1位になった『恋人たち』(2015 橋口亮輔監督)が「日本アカデミー賞」のほうでは全くノミネートもされず完全黙殺されたのは、劇中に「東京オリンピックなんかどうでもいいんだよ!」というセリフがあったからではないかと思います。一方、あの男の小説が原作の『永遠の0』(2014 山崎貴監督)や国策映画『シン・ゴジラ』(2016 庵野秀明監督)が作品賞になっているのは、どうしたって権力への忖度のようにみえます。(この項、続く) (ジャッピー!編集長)