このところの当ブログで、『彼女たちの革命前夜』(2019 フィリッパ・ロウソープ監督)を取り上げました。1970年にロンドンで開催された「ミス・ワールド大会」を粉砕しようとした女性活動家たちを描いた映画です。

昨年、僕がこの映画と同時期に観たのが『グロリアス 世界を動かした女たち』(2020 ジュリー・テイモア監督)です。こちらも、女性解放運動を先駆者、グロリア・スタイネムさんという実在の人物を描いた映画です。グロリアさんを子役、若き日を演じるアリシア・ヴィキャンデルさん、壮年期のジュリアン・ムーアさんまで4人の女優が演じるのですが、時にはこの4人のうち2人、3人が同じ画面に現れて「過去のあのときは?」とか問いかけたり、内面を語りあったりするのが斬新です。なので、タイトルも『グロリアス』と“複数形”なのです。

グロリアさんの父親がユニークな人で、「先が分からないことはステキなことだ!」と考える自由人です。そんな父親のもと、学校なんか行かなくても「旅こそ学べるんだ」と育てられます。大人になってからも、そんな幼い少女の頃の「自分」が自分の中にたしかにいるのだということを、この「4人1役」という手法が効果をあげていたし、まさに「映画」ならではの表現だと思います。

グロリアさんは、初めて記事を書く仕事をもらった会社で担当の男性編集者から郵便物を渡され「これを投函しておいてくれ。あと、○○ホテルの▽号室に来てくれ」と当たり前のように言われます。「お使い」をさせたり、「ホテルに誘う」という行為がごく普通に行われていたことが分かります。このとき、グロリアさんはその郵便物を置いたまま出て行き、そのまま会社を辞めるのです。女性を「対等」に見ることもなく、男性が優位にあることに何の疑いもない男たちに決別を突きつける、この場面にグロリアさんの「黙っていられない」、信念を貫く決意があらわれていました。

また、「中絶反対デモなんか行くな」という上司が「あんなのイカれた女たちだぞ!」というと、「ありがとう、私もイカれた女と分かったわ!」と言い返す場面も痛快でした! (この項、続く) (ジャッピー!編集長)