ひとつ前の当ブログで、『若大将』シリーズで加山雄三さんが演じた「田沼雄一」と、ライバル?の「石山新次郎」という役名の由来について書きました。

特に、田中邦衛さんが演じた「石山新次郎」は、ワガママな行動で東宝を振り回したイシハラ慎太郎をもじってつけられたのです。では、ヒロインの「澄子」(星由里子さん)や「節子」(酒井和歌子さん)の役名はどこから来たのでしょうか。

第1作目の『大学の若大将』(1961 杉江敏男監督)から、若大将が大学を卒業する設定の『リオの若大将』(1968 岩内克己監督)まで11本(加山雄三さんのライヴ映像の『歌う若大将』は除く)にわたってヒロインをつとめた星由里子さん、役はスーパーの店員からスチュワーデスまで様々ですが一貫して「澄子」という名前でした。

これは、明らかに藤本真澄プロデューサーの名前の一字をとっていると思います。そもそも、藤本さんが若い頃に観た『大学の若旦那』(1933 清水宏監督)など「若旦那」ものを加山雄三さんでやろうと企画されたのです。シリーズの生みの親である藤本さんに敬意を示し、名前から「澄」をとってヒロインの名前にしたと思います。

『フレッシュマン若大将』(1969 福田純監督)から、社会人となった若大将の活躍を描く設定となり、ヒロインも酒井和歌子さんに代わります。役名は「節子」に変わりますが、このネーミングも藤本さんに関係あると僕はにらんでいます。

東宝の大プロデューサー、藤本真澄さんといえば『青い山脈』(1949 今井正監督)の製作で有名ですが、主演をつとめた原節子さんに惚れていたといいます。実際に結婚を申し込んだこともあるそうです。その恋は成就しませんでしたが、原節子さんが映画界を去っても想い続けた藤本さんは生涯独身を貫きました。

そんな藤本プロデューサーの原節子さんへの慕情はよく知られていましたから、ヒロインを「節子」と名付けたのではないかと推測します。藤本さんが生み出した「若大将」がせめて、映画の中で「節子」との恋を成就させてあげたいという周囲の気持ちがあったのでは……などと勝手に思っています。(ジャッピー!編集長)