ひとつ前の当ブログで、『火垂るの墓』(1988 高畑勲監督)を取り上げました。

野坂昭如さんの体験も反映された原作を、アニメならではの表現をうまく活かした名作です。飢えて亡くなってしまった妹・節子のために兄の清太が蛍を放つシーンの哀切は今でも忘れられません。

今も、ウクライナではロシアの攻撃に脅え、極寒の中、電力不足で凍えている子どもたちがたくさんいるわけです。それどころか、ロシア軍が占領していた南部ヘルソン州には「子ども用の拷問部屋」まであったと新聞で読みました。ウクライナの人権委員会によると、食料はほとんど与えられず、水も2日に1回だったといいます。また、「お前たちは親に捨てられたんだ」とか「もう戻れないぞ」と、心理的に追い詰めていたといいますから酷い話です。

「戦争」というのは本当に、いちばん弱い者、本来は守られるべき存在の者が犠牲になるのです。何が起こっているのか理解できない子どもたちが何の抵抗もできないまま、殺され、傷つけられ、せっかく受けた「生」を奪われてしまうのです。大人の、それも一部の権力者のせいで。

菅原文太さんの言葉を思い出します。以前にも紹介しましたが、毎年夏に開催されている『戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭』(旧・新藤兼人平和映画祭)に寄稿したメッセージです。「若い人々と子供たちが幸せでない時代は、間違いなく悪い時代だ。若い人たちと子供たちに希望がない国は、間違いなく悪い国である。日本は大丈夫か。いや、日本はこのままでは第二次世界大戦の敗戦後に生き残った人々で築いた戦争をしない国から、若い人々や子供たちを犠牲にする国に戻っていくだろう。そんな国にならないために、戦争の記憶と記録を幾度も幾度も繰り返し読み、また語り、伝えてゆこう」

何の国民的議論もなく、閣議決定でいつの間にか「軍事大国」化に大きく舵をとったこの国、今こそ、この言葉を強く心に刻むときではないかと思います。(ジャッピー!編集長)