ひとつ前の当ブログで、瑳峨三智子さん主演の『裸体』(1962 成沢昌茂監督)の劇中、銭湯のシーンで浪花千栄子さんの乳房が映っていた話を書きました。

さらに意外なベテラン女優さんが映画で乳房を見せています。浪花千栄子さんと同じ「千栄子」という名前です。分かりますか?何と「東山千栄子」さんです。日本映画史上の名作『東京物語』(1953 小津安二郎監督)で笠智衆さんの妻を演じた大女優です。その東山さんが『東京物語』の2年後、『沙羅の花の峠』(1955 山村聰監督)という映画で両乳房を丸出しにしています。

俳優の山村聰さんが監督した無医村をモチーフにした社会派映画で、ハイキングにやってきた学生グループ(メンバーは宍戸錠さん、南田洋子さん、そして超絶に可愛い芦川いづみさんなど)が、地元の子どもが激しい腹痛を起こしたのを見て、医者に連れていこうとします。しかし、この村は医者がおらず、今までも病人が出ると薬草をとったり、祈祷師にお祓いしてもらうという前近代的なことをしていたので、学生グループは村人たちを何とか説得する……というものです。

東山さんは女祈祷師の役で、苦しみ横たわる少年の前で上半身脱いで祈祷をします。ポロリした浪花さんと違って、こちらは確信犯?です。このとき東山さん65歳。

おそらく、この頃はまだ、乳房を赤ちゃんにお乳をあげるときなど、人前でも乳房を出すことはそんなに珍しくなかったように思います。「ストリップ」とかはあった一方、特に(この映画の舞台のような田舎では)乳房を出すことにそれほどセクシャルな意味はないことは多かったのでしょう。この東山さんもお色気シーンではなく、牧歌的な因習を表すためのヌードだったのだと思います。でも、初めてこの映画を観たときはちょっと驚きました。 (ジャッピー!編集長)