ひとつ前の当ブログで、『チャーリーズ・セズ/マンソンの女たち』(2018 メアリー・ハロン監督)を取り上げました。

この映画の中でも描かれますが、ヒッチハイクしていたマンソン・ファミリーの少女を乗せたデニス・ウィルソンさん(ビーチ・ボーイズ)がマンソンに紹介されたのが、マンソンがレコード会社と接点を持つ切っ掛けだったのです。

これをモチーフにした場面があるのが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019 クエンティン・タランティーノ監督)です。この映画のはじめの方に、スタントマンをやっているクリフ(ブラッド・ピットさん)の車に半ば強引に(ほとんど逆ナンパ)女の子が乗りこんできます。このプシー・キャットと名乗る少女は腋毛も隠さず、明らかにヒッピーという感じで「フェラしてあげようか?」などと言います。クリフは少女に年齢を訊きますが、18歳以下と見抜き相手にしません。

実は、クリフは今はスタントマンをしていますが、元・退役軍人で、ヒッピー文化を苦々しく思っているのです。また、レオナルド・ディカプリオさん演じる落ち目のスター、リックが「マカロニウエスタン」の撮影で、衣装を渡されると「ヒッピーぽい」格好に露骨にイヤな顔をしたり、「ヒッピーのカスどもめ!」というセリフもあります。

西部劇撮影用の「スパーン映画牧場」はすっかりマンソン一味に乗っ取られて、フリーセックスのヒッピーたちの巣窟のようになっています。そこから帰るときに、一味をクリフが簡単に叩きのめしたり、とにかくその「ヒッピーに対する嫌悪感」はハンパじゃないです。「西部劇」といえば、日本の「時代劇」のようなものでしょうか。当時は、アメリカン・ニューシネマが登場したり、イタリア製「マカロニ・ウエスタン」に押され、正統的な西部劇が人気を落としていた時期です。古き良きハリウッドへのタランティーノ流のオマージュなのでしょう。

映画の終幕近く、私道に車を乗り入れて来たマンソン一味に、リックが「出ていけ! このデニス・ホッパー!」と叫ぶのには笑いました。 (ジャッピー!編集長)